海峡植民地

海峡植民地

海峡植民地は、19世紀から20世紀前半にかけて、マレー半島に存在したイギリスの植民地です。英語ではStraits Settlementsと呼ばれ、当時「叻嶼呷」とも表記されました。1826年にペナン、マラッカ、シンガポールの3つの拠点が統合されて成立し、その後ココス島、クリスマス島、ラブアン島も編入されました。

歴史

前史

17世紀、イギリスはアンボイナ事件を機に東インド諸島から撤退し、インド経営に注力しました。しかし、18世紀後半からの中国との貿易拡大、ナポレオン戦争によるオランダ勢力の後退により、再び東南アジアに進出しました。その拠点となったのが、マレー半島です。

ペナン植民地

1786年、フランシス・ライトがクダ王国との条約によりペナン島を獲得しました。イギリス東インド会社は、インドと中国を結ぶ中継港、マラッカ海峡の産品集積地、海軍基地としてペナン島を必要としていました。ペナン島はプリンス・オブ・ウェールズ島と改名され、ジョージタウンが建設されました。1800年には対岸の土地も獲得し、ウェルズリー州と命名されました。

当初、イギリス東インド会社の中継港としてはアンダマンも候補でしたが、1805年にペナンが英領インドの管区に指定されたことで、ペナンの地位は確固たるものとなりました。ペナンは自由貿易港として発展しましたが、後にシンガポールにその地位を奪われることになります。

マラッカ植民地

マラッカは、1645年以来オランダの支配下にありましたが、ナポレオン戦争中にイギリスが占領しました。戦後、イギリスは一時マラッカをオランダに返還しましたが、1824年の英蘭協約で、ベンクーレン植民地と引き換えにマラッカを獲得しました。これにより、イギリスとオランダの植民地の境界線が引かれました。

シンガポール植民地

1819年、トーマス・ラッフルズがジョホール王国からシンガポールを割譲させ、イギリスの拠点としました。シンガポールは自由貿易港として急速に発展し、東南アジア貿易の中心地となりました。スエズ運河の開通も、シンガポールの発展を後押ししました。

海峡植民地の成立

1826年、イギリス東インド会社はペナン、マラッカ、シンガポールを統合し、海峡植民地を設立しました。当初はペナンに知事が駐在しましたが、1832年以降はシンガポールが行政府となりました。海峡植民地は自由港であったため、関税収入が得られず、期待された香料貿易も不振に終わりました。そのため、東インド会社にとっては「お荷物」と見なされるようになりました。また、アヘン戦争以降、中国からの移民が増加しましたが、治安上の問題も発生しました。

英領マラヤの成立

シンガポールに拠点を置くイギリス商人たちは、海峡植民地のインドへの従属に反対し、分離を求めました。1867年、海峡植民地はイギリス植民地省の管轄に移管され、ロンドンから派遣される知事がシンガポールに駐在しました。この頃、イギリスはマレー半島への積極的な介入を開始しました。1874年のパンコール条約を皮切りに、スズの利権確保を目的として、マレー半島の諸国への影響力を強めていきました。1896年には、ペラ、スランゴール、ヌグリ・スンビラン、パハンの4つのマレー系スルタン国がマレー連合州となり、イギリスの直接統治と保護国からなる英領マラヤが成立しました。

解体

海峡植民地は、英領マラヤの中核として機能していましたが、第二次世界大戦中に日本軍に占領されました。戦後、英領マラヤの再編に伴い、1946年に解体されました。ペナンとマラッカはマラヤ連邦に組み込まれ、シンガポールは独立したクラウン・コロニー（英国王直轄地）となりました。ココス島とクリスマス島は後にオーストラリアへ、ラブアン島は北ボルネオの一部を経てマレーシアの一部となりました。

参考文献

池端雪浦編 『東南アジア史Ⅱ 島嶼部』、山川出版社＜新版世界各国史6＞、1999年
信夫清三郎 『ラッフルズ伝』、平凡社＜東洋文庫＞、1968年
鶴見良行 『マラッカ物語』、時事通信社、1981年

関連項目

マレーシアの歴史
トーマス・ラッフルズ

外部リンク

『海峡植民地』 - コトバンク

もう一度検索