サラール族

サラール族（撒拉族）: 中国のテュルク系イスラム教徒の文化と歴史

サラール族、またはサラ族（撒拉族、英語: Salar）は、中華人民共和国に居住するテュルク系民族であり、イスラム教を信仰する少数民族の一つです。2000年の統計では人口は約10万人を数え、中国政府が公認する56の民族の中で比較的に大きな集団を形成しています。青海省、甘粛省、新疆ウイグル自治区などに居住し、独自の文化と歴史を育んできました。

起源と歴史

サラール族の起源は、中央アジアから東進してきたオグズ系遊牧民に遡ります。チベット系民族、漢民族、回族などとの混交を経て、現在のサラール族が形成されました。モンゴロイド系の民族として分類され、独自の言語と文化を維持しながらも、周囲の民族の影響も受けてきました。

歴史を振り返ると、1781年には清朝に対する反乱が勃発しましたが、鎮圧され、人口の約4割が犠牲になったと伝えられています。この出来事は、サラール族の歴史に深く刻まれた出来事と言えるでしょう。その後も、中国社会の中で独自のアイデンティティを維持しながら、生活を営んできました。

地理的分布と自治地方

サラール族は主に以下の地域に居住しています。

青海省: 循化サラール族自治県など
甘粛省: 積石山バオアン族ドンシャン族サラール族自治県など
* 新疆ウイグル自治区: イリ・カザフ自治州など

これらの地域では、サラール族独自の文化や伝統が保護され、自治を行う行政単位が設置されています。

文化と伝統

サラール族の文化は、周囲の民族の影響を受けつつ、独自の特色を持っています。伝統衣装は回族の衣装と類似しており、男性は髭を蓄え、白色の上着や帽子を着用する一方、女性は未婚であれば明るい色の漢服風、既婚であれば白や黒のベールを着用することが多いです。

音楽においては、「Kouxuan」と呼ばれる弦楽器が特徴的です。銀や銅で作られたこの楽器は、女性によって演奏され、サラール族の文化を象徴する存在となっています。

婚姻制度では、離婚は夫からの申し出によってのみ成立しますが、手続きは非常に簡素です。夫が妻に離婚を告げるだけで離婚が成立し、妻は家を出て、夫は再婚が可能です。

言語

サラール語はサラール族の母語ですが、人口の約3分の2は漢語（中国語）を日常会話に使用しており、サラール語を話す人は全体の3分の1程度です。サラール語には2つの主要な方言があり、その違いはチベット語・漢語の影響を受けた方言とウイグル語・カザフ語の影響を受けた方言に大別されます。サラール語はトルクメン語と類似性があり、伝統的にはアラビア文字で表記されてきました。しかし、近年はラテン文字表記も導入されています。

文字

サラール語の表記には、伝統的にアラビア文字が用いられてきました。宗教教育や日常生活で使用されてきましたが、公的な場での使用は限られていました。近年では、中国政府の主導でラテン文字表記が導入され、サラール語教育などで活用されるようになっています。このラテン文字表記の導入は、サラール語の保存と発展に貢献すると期待されています。

まとめ

サラール族は、独自の文化と歴史を持つ中国の少数民族です。イスラム教を信仰し、テュルク系民族としてのアイデンティティを維持しながら、周囲の民族との交流を通して独自の文化を形成してきました。現在も、独自の言語と文化を守りながら、中国社会の一員として生活を営んでいます。今後、サラール族がどのようにその文化とアイデンティティを維持し、発展させていくのか、注目されます。

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