サルヴァトーレ・アッカルド

サルヴァトーレ・アッカルド（Salvatore Accardo、1941年9月26日生まれ）は、イタリア出身の著名なヴァイオリニストです。その並外れた技巧に加え、明るく透明感のある音色、そして心に響く美しい歌心が融合した演奏は、世界中の音楽愛好家から高い評価を受けています。特に、ヴァイオリン演奏における超絶技巧の代名詞であるニコロ・パガニーニの作品 Interpretionや研究において、現代における第一人者と目されています。

幼少期と教育

アッカルドはトリノに生まれ、幼い頃から類稀な音楽的才能を示しました。彼はナポリのサン・ピエトロ音楽院でルイージ・ダンブロジオに、シエーナのキジアーナ音楽院でジョルジュ・エネスコ門下のイヴォンヌ・アストリュクに師事しました。さらに、偉大なヴァイオリニスト、ナタン・ミルシテインからも教えを受け、その音楽性を磨きました。13歳という若さでトリエステにて初の演奏会を開き、その早熟な才能は音楽界で広く注目されました。

輝かしいコンクール歴と飛躍

アッカルドのキャリアは、数々の国際コンクールでの成功によって確固たるものとなりました。1955年のヴィオッティ国際音楽コンクールでの入賞を皮切りに、1956年のジュネーヴ国際音楽コンクール、1957年のイタリア放送主催のコンクールでも優秀な成績を収めます。そして、1958年、17歳という若さで、ヴァイオリニストにとって最も権威あるコンクールの一つであるパガニーニ国際コンクールで第1位に輝きました。この偉業により、彼は「パガニーニの再来」と称され、国際的な名声を一気に高めました。現在、彼はこのコンクールで審査員を務め、後進の育成にも貢献しています。

世界的な演奏活動とパガニーニへの貢献

パガニーニ国際コンクールでの優勝後、アッカルドはマルタ・アルゲリッチをはじめとする世界的な音楽家たちとの共演も重ねながら、ソリストとして世界各地で活発な演奏活動を展開しました。1970年代には、イタリアを代表する弦楽アンサンブルであるイ・ムジチ合奏団のコンサートマスターを務め、その芸術性の向上に貢献しました。彼の音楽キャリアにおける特筆すべき功績は、パガニーニ作品の演奏と録音における貢献です。1970年代半ばには、指揮者シャルル・デュトワと共に、パガニーニのヴァイオリン協奏曲全6曲のほか、譜面が残されているヴァイオリンと管弦楽のための作品、そしてヴァイオリン独奏曲のほぼ全てを録音するという画期的なプロジェクトを成し遂げました。特にヴァイオリン独奏のための「24の奇想曲」は、これまでに少なくとも2回録音しており、その演奏はリファレンスとして広く知られています。フィリップス、ドイツ・グラモフォン、EMI、ソニー・クラシカル、フォネ、Dynamic、ワーナーなど、主要なレーベルから50点以上の録音をリリースしており、その膨大なディスコグラフィーは彼の活動の幅広さを示しています。また、1989年に製作されたイタリア映画「パガニーニ」では、音楽の指揮とヴァイオリン演奏を担当し、パガニーニの世界観を表現しました。

幅広いレパートリーと愛用楽器

アッカルドの演奏は、パガニーニ作品で特に知られていますが、そのレパートリーは多岐にわたります。ブラームス、メンデルスゾーン、チャイコフスキーといった古典的・ロマン派の主要なヴァイオリン協奏曲でも優れた録音を残しています。また、指揮者クルト・マズアとの共演で、マックス・ブルッフのヴァイオリンのための協奏的作品をほぼ全て録音しており、知られざる名曲の発掘にも意欲を示しています。彼の演奏の魅力は、単なる技術的な完璧さだけでなく、音楽の内面を深く掘り下げた表現力と、楽器から引き出される豊かで色彩感あふれる音色にあります。

アッカルドは、歴史的な名器を愛用することでも知られています。これまでに、アントニオ・ストラディヴァリウス製作の「ファイアーバード・エクス・サン＝テグジュペリ」（1718年製）や「ハルト・エクス・フランチェスカッティ」（1721年製）といったヴァイオリン、そしてジュゼッペ・グァルネリ・デル・ジェス製作のヴァイオリン（1734年製）を演奏に用いています。これらの銘器から引き出される美しい音色は、彼の音楽表現に一層の深みを与えています。

近年はヴァイオリンに加え、ヴィオラ奏者としても活動しており、また指揮台にも立つなど、その音楽活動は多岐にわたっています。サルヴァトーレ・アッカルドは、20世紀後半から現在に至るまで、イタリアのみならず世界の音楽界において、最も影響力のあるヴァイオリニストの一人として活躍し続けています。

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