サンシュ2世 (ポルトガル王)

サンシュ2世：激動の時代を生きたポルトガル王

サンシュ2世（1209年 - 1248年）は、第4代ポルトガル王として、レコンキスタの推進と王権強化を目指しましたが、教会との対立や内政の混乱により、最終的に廃位されるという波乱の生涯を送りました。

レコンキスタと領土拡大

サンシュ2世は、ポルトガル東部・南部への領土拡大を目指し、レコンキスタに積極的に取り組みました。1225年にはエルヴァスを包囲しましたが、攻略には失敗。しかし、サンティアゴ騎士団の助けを得て進軍を続け、1238年にはアレンテージョ地方全域とアルガルヴェ地方東部沿岸を征服するという大きな成果を上げました。

教会との対立と内政の混乱

サンシュ2世は、父王の政策を継承し、王権強化のために教会の富を抑制しようとしました。教会への土地寄進や遺贈を禁止したことで、教会との対立を深め、貴族との紛争にも巻き込まれ、内政は混乱。これらの状況を重く見た高位聖職者たちは、ローマ教皇インノケンティウス4世にサンシュ2世の廃位を申請しました。

教皇による廃位と亡命

1245年、教皇インノケンティウス4世は、サンシュ2世の曽祖父であるアフォンソ1世の「封建申請書」と国土寄進を根拠に、サンシュ2世の廃位を決定。王弟であるアフォンソ（後のアフォンソ3世）に王位を譲るよう命じました。サンシュ2世はこれを受け入れずトレドへ亡命し、1248年に失意のうちに亡くなりました。妃メシア・ロペス・デ・アロとの間には子供がおらず、アフォンソ3世が正式にポルトガル王として即位しました。

忠義を貫いたコインブラ城主

サンシュ2世が廃位され、アフォンソ3世が新王として即位する中、コインブラ城主マルティン・デ・フレイタスは、前王サンシュ2世への忠誠心からアフォンソ3世に反抗し、コインブラ城に立てこもりました。アフォンソ3世はコインブラを包囲しましたが、マルティンは1年4ヶ月もの間、包囲に耐え続けました。サンシュ2世の死を知ったマルティンは、アフォンソ3世の許可を得てトレドへ赴き、サンシュ2世の棺を開けてもらい、コインブラ城の鍵を遺骸の手に握らせました。その後、マルティンは改めて鍵を受け取り、帰国後にアフォンソ3世に手渡しました。このマルティンの行動に感銘を受けたアフォンソ3世は、彼をそのままコインブラ城主にとどめようとしましたが、マルティンは固辞しました。マルティンのサンシュ2世に対する忠義は、人々の心を打ちました。

サンシュ2世の治世は、レコンキスタの進展と王権強化の試み、そして教会との対立という、複雑な要素が絡み合った時代でした。彼の生涯は、中世ポルトガルの歴史における重要な転換期を象徴しています。

参考文献
A.H.デ・オリヴェイラ・マルケス著、金七紀男訳『世界の教科書=歴史010 ポルトガル 1』ほるぷ出版、1981年。
安部真穏『波乱万丈のポルトガル史』泰流社（泰流選書）、1994年。
D.W.ローマックス著、林邦夫訳『レコンキスタ 中世スペインの国土回復運動』刀水書房、1996年。
合田昌史「ポルトガルの誕生」『新版世界各国史16 スペイン・ポルトガル史』収録。立石博高編、山川出版社、2000年。

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