サンテール委員会

サンテール委員会

サンテール委員会（1995年1月23日 - 1999年3月15日）は、ルクセンブルクの元首相ジャック・サンテールを委員長とする欧州委員会であった。この委員会は20名の委員から構成され、ユーロの導入など重要な業務を遂行した。しかし、組織内部で発覚した不正問題が影響し、史上初めて任期途中で総辞職に至った。

委員の任命と背景

1994年、前任の委員長ジャック・ドロールが退任した際、彼の連邦主義的な姿勢は多くの加盟国に批判され、新たな委員長候補の選定に影響を及ぼした。ベルギーの首相ジャン＝リュック・デハーネが候補として挙がるも、イギリス政府が難色を示したため、最終的にサンテールが委員長に指名された。彼は以前、EUの基盤である三本柱構造を提唱しており、このため連邦的な見解が薄いと見なされていた。サンテールは1994年7月に欧州議会の承認を受け、1995年1月18日に新しい委員会をスタートさせた。

委員会の主要業務と課題

サンテール委員会は、2000年に調印されるニース条約の策定や、2004年の東欧拡大、1997年のアムステルダム条約に関わるなど、様々な政策を推進した。特に、ユーロの導入を進め、ユーロ記号の設定や、ユーロの発行に向けた「緑書」と呼ばれる文書も作成した。ユーロは1999年1月1日に実施され、その誕生はサンテール委員会にとって大きな成果であった。

しかし、委員会はまた、前任のドロール委員長から引き継いだ社会政策課題においても活動を続け、失業問題への対策を講じたが、欧州議会からの批判を受け、権威を失っていった。特に共通農業政策の改革案は、議会内での受け入れが難航したため、委員会の信頼性が揺らぐ一因となった。

予算に関する論争

サンテール委員会は、欧州議会との関係でも数々の摩擦を引き起こした。毎年のEU予算は、欧州会計監査院の報告に基づいて議会の承認を必要とするが、1998年末に監査委員会が予算運営に疑念を抱き、委員会に対して質問を行った際、その対応が不適切であると非難された。その中で、内部告発者のパウル・ヴァン・ビュイッテンネンが提出した文書が大きな波紋を呼び、財政運営の不正と隠蔽が指摘された。

その結果、予算監督委員会は欧州議会において、委員会への信任投票を行うことになった。サンテールはこの投票が実質的な信任投票であると認識し、1998年12月17日に議会が関連の承認を拒否する事態に直面した。これにより、委員会への不信任が提出され、議会内の政党間の対立が激化していった。

総辞職とその後の影響

不正問題に対する動きが強まる中、1999年1月14日にサンテール委員会は不信任決議案が可決された。3月15日には、独立専門家委員会が報告書を提出し、ほとんどの委員の潔白が示されたものの、一部の委員に責任感が欠けていることが指摘された。この報告書を受けて、サンテールは総辞職を決定し、彼の退任はEUにおける大きな政局の一つとなった。

その後、プローディ委員会が発足し、より厳格な不正対策を打ち出すこととなる。具体的には、欧州不正対策局（OLAF）が設立され、以前の不正対策調整部（UCLAF）の機能を引き継いだ。これにより、EU内での不正行為に対する監視が強化され、システム改革が進められていくこととなった。サンテール委員会の出来事は、欧州議会の役割や機能、そしてその権限の在り方に対する議論を深める重要な契機となった。

このような背景の中で、サンテール委員会の総辞職は、EUの政策形成に深い影響をもたらすと同時に、政治的な議論や政党間の対立を激化させる結果となった。

もう一度検索