サンディ・サドラー

サンディ・サドラー、本名ジョゼフ・サドラーは、1926年6月23日にマサチューセッツ州ボストンで生を受け、2001年9月18日にその生涯を閉じたアメリカ合衆国の元プロボクサーです。身長174cmというフェザー級としては恵まれた体格を持ち、史上屈指の世界フェザー級王者として名を刻みました。キャリア通算で103回のノックアウト勝利を記録しており、その圧倒的な強打を物語っています。

幼少期をニューヨーク州ハーレムで過ごした後、アマチュアボクシングを経て、1944年にプロキャリアをスタートさせました。プロ転向後は積極的に海外遠征を重ねることで経験値を積み、その強打を武器に数々の対戦相手をリングに沈めていきました。サドラーのキャリアにおける最大のハイライトは、史上最高の技巧派と称されるウィリー・ペップとのライバル関係でしょう。1948年10月29日、ニューヨークのリングでペップと初めて対戦し、強烈な攻撃で4回KO勝利を収め、世界フェザー級王座を獲得しました。この勝利はボクシング界に大きな衝撃を与えました。

しかし、翌年2月11日の再戦では、ペップの徹底したアウトボクシングと巧みな防御技術に苦戦し、15回の判定の末に敗れて王座を失いました。雪辱を許したサドラーでしたが、1950年9月8日に行われた両者にとって3度目の対戦、いわゆるラバーマッチで再びペップと激突します。この試合では8回にペップが肩を脱臼し棄権したため、サドラーが勝利し王座を奪還しました。そして1951年9月26日、4度目にして最後の対戦が行われます。この試合も激しい攻防が繰り広げられましたが、9回にペップが眼を負傷して棄権。サドラーがTKOで勝利し、長年のライバル関係に終止符を打ちました。このペップとの一連のシリーズ、特に最終戦は、ルールぎりぎりの反則技が飛び交うダーティ・ファイトとして、ボクシング史に名を残しています。

フェザー級王座を再び獲得したサドラーは、その後2度の防衛に成功しています。特に、フィリピンの国民的英雄であるフラッシュ・エロルデとの防衛戦は注目されました。エロルデのスピードと技術に苦戦を強いられましたが、最終的には13回KOで退け、王座を守り抜きました。

海外での活躍に加え、サドラーは日本にも足跡を残しています。1955年7月8日には、日本のトップ選手であった金子繁治との対戦のために来日し、6回TKOで勝利を収めました。

通算103KOという圧倒的なパンチ力を持ちながらも、サドラーの評価は常に一定ではありませんでした。サミングやバッティングといったラフプレーや反則技を厭わないファイトスタイル、さらにノンタイトル戦での意外な敗北が多かったため、一部のベテラン専門家からは厳しい意見が出されることもありました。しかし、174cmという恵まれたリーチ、両手を前に突き出す独特な構えから放たれる強烈で多彩な左の強打、卓越した攻撃センス、そして並外れた打たれ強さを兼ね備えたチャンピオンとして、近年改めてその実力と功績が評価され始めています。

現役王者として活躍を続ける中、1957年に交通事故に遭い眼を負傷したことが、彼のキャリアを abruptly 終わらせることになりました。この怪我が原因で、彼はチャンピオンのままリングを去らざるを得なくなります。引退後の晩年は恵まれなかったと言われ、アマチュアボクシングの指導者として生計を立てていた時期もあったようです。

サンディ・サドラーのプロ通算戦績は、162戦144勝（103KO）16敗2引分けという素晴らしい記録を残しています。その強烈なパンチと、ライバルとの歴史的な死闘は、今なおボクシングファンの記憶に深く刻まれています。

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