サヴェリオ・メルカダンテ

サヴェリオ・メルカダンテ：オペラ改革者、知られざる旋律

ジュゼッペ・サヴェリオ・ラッファエーレ・メルカダンテ（1795年 - 1870年）は、ロッシーニ、ベッリーニ、ドニゼッティといった19世紀前半のオペラ界を代表する作曲家たちと、ヴェルディに代表される後期オペラを結びつける、重要な移行期の作曲家です。彼は、イタリア・オペラの革新に大きく貢献した人物として知られています。

生涯

メルカダンテは貴族の私生児として生まれました。正確な生年月日や生地は不明ですが、1795年9月17日にアルタムーラで、1797年6月26日にナポリで洗礼を受けたという記録が残っています。音楽の手ほどきは腹違いの兄から受け、1808年にナポリのサン・セバスティアーノ音楽院に入学。様々な楽器の演奏と作曲を学び、1817年には音楽院の管弦楽指揮者として、協奏交響曲や数々の協奏曲を作曲しました。

1819年から1820年にかけて作曲した最初のオペラ『ヘラクレスの神格化』は、ナポリのサン・カルロ劇場で上演されました。その後、『エリーザとクラウディオ』でミラノ・スカラ座デビューを果たし、成功を収めます。この作品を機に、メルカダンテはイタリア国内で広く知られる存在となりました。1821年にボローニャで上演された『マリア・ストゥアルダ』は、シラーの戯曲を原作とした作品で、その現代的な内容が注目を集めました。

1823年にロッシーニがフランスへ移住すると、興行主のドメニコ・バルバイアはメルカダンテを後継者としてサン・カルロ劇場の常任作曲家に任命。しかし翌年、バルバイアは契約を破棄し、ウィーンのケルントナートーア劇場の依頼で作曲することになりました。しかし、ウィーンでは成功を収めることができませんでした。

1826年、フェニーチェ劇場で上演された『スペインの女王カリテア』が大成功。「祖国のために死する者」は、イタリア統一運動の象徴的な曲として、ボローニャ蜂起やバンディエラ兄弟によって歌われました。その後、マドリードのイタリアオペラの音楽監督となり、マドリード、カディス、リスボンで作品を上演。この時期に、イベリア半島の民族音楽から影響を受けました。

1833年にはジェノヴァのソフィア・ガンバーロと結婚。ノヴァーラの教会の合唱団長の職を得て、1840年まで教会音楽を作曲しました。

1835年、パリのイタリア劇場でシラー原作の『群盗』を上演しましたが、成功には至りませんでした。しかし、パリでマイアベーアのグランド・オペラに触れたことがきっかけとなり、帰国後、作風を大きく変化させます。より大きな劇的効果を追求するため、楽曲に変化をつけ、管弦楽はより色彩豊かに、そして雄大な合唱を導入しました。また、声楽は装飾を減らし、より劇的な様式を取り入れました。

新様式による最初の作品は、1837年にミラノ・スカラ座で上演された『誓い』。この作品はメルカダンテの最高傑作とされています。『誓い』の成功後、同様の傾向を持つ作品を次々と発表し、1839年の『暗殺者』で頂点を迎えました。しかし、ナポリに戻ってからは、ナポリの伝統に基づいた古い作風に回帰しました。

1840年にナポリ音楽院長に就任。視力の衰えや音楽院の仕事により、作曲のペースは落ちましたが、作曲活動は続けました。最後の劇場作品は『ペラジオ』（1857年サン・カルロ劇場初演）です。イタリア王国成立後には、ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世やジュゼッペ・ガリバルディを称える曲を作曲。1862年に失明した後も、口述筆記によって作曲を続けました。メルカダンテは19世紀前半の主要なオペラ作曲家の中で最も長生きし、1870年にナポリで没しました。

音楽

メルカダンテは生前、オペラ作曲家として広く知られていましたが、多くの器楽曲も作曲しました。その作品は、60曲のオペラ、バレエ音楽、声楽曲、30曲のミサ曲を含む教会音楽、約60曲の交響曲、20曲の協奏曲など、多岐にわたります。

フルートやクラリネットのための協奏曲やソナタも作曲しており、オペラ作品が顧みられる機会が少なくなった現代では、むしろこれらの器楽曲によって記憶される存在となっています。特に、5曲あるフルート協奏曲のうち、ホ短調の第2番は、現代において最も有名なメルカダンテの作品の一つとなっています。

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