サージング

サージング (Surging)

サージングとは、ジェットエンジンや圧縮機を搭載した機器において、圧縮機の失速が発生し、圧縮空気が逆流することで正常な動作が損なわれる現象です。この問題は航空機の運行やエンジンの性能に直接的な影響を与えるため、エンジン設計や運用において重要なポイントとして扱われています。

サージングの概要

サージングが発生する主な理由は、エンジン回転数と対気速度の不均衡によるものです。特に、上空において音速近くではこの現象が起こりやすいとされています。基本的に、軸流式圧縮機においてはサージングが発生しやすく、逆に遠心式圧縮機では比較的少ないですが、全く起こらないわけではありません。

サージングが発生すると、燃焼室に必要な空気が供給されづらくなり、エンジン出力は急激に低下します。この際、サージング特有の轟音が発生するため、搭乗者はすぐに異常を感じることになります。

サージングへの対策

サージングを防ぐための対策にはいくつかの方法があります。特に、軸流式圧縮機の場合、以下の方法が有効です:

1. 可変式ステーターの導入: ステーターの角度を調整可能にすることで、流体の流れをより安定させることができます。
2. 圧縮機駆動軸の多軸化: 複数の軸を持つ設計にすることで、より自由な動作を実現します。
3. 抽気の施行: 圧縮機の途中に空気の出入り口を設け、内部の状況に応じて給気または排気を行い、流れを安定化させる手法です。

可変式ステーターは以前は単軸式圧縮機が多い時代には一般的でしたが、現在では多軸化といった新しい設計が行われ、FADEC（フル・デジタル・エンジン・コントロール）技術が導入されることで、サージングの発生は減少しています。一方で、多軸式圧縮機はエンジン性能や技術的要望の向上に伴い、主流の設計として残っています。抽気の方法は現在でも広く使われており、単軸と多軸のどちらにも対応可能です。

サージングの事例

サージングの具体例として、サザン航空242便墜落事故が挙げられます。この事故では、パイロットの急激なスロットルレバー操作が圧縮機のサージングを引き起こし、その結果、エンジンに損傷を与えてしまいました。このように、サージングは、事故や故障を引き起こす可能性がある重大な現象です。

サージングによってコンプレッサーブレードが失速状態に陥ると、揚力の急減や抗力の急増が発生し、圧縮機の性能は大きく損われてしまいます。サージングの原因となる要因にはいくつかの例が考えられます:

• - ブレードの損傷: 特にバードストライク（鳥の衝突）が民間機でよく見られ、重大な損傷を引き起こすことがあります。
• - 圧縮機部材の磨耗や汚染: 回転翼の劣化や、ブリード弁やシールの腐食がその例です。
• - 圧縮機の誤組み立て: 正常に作動しない案内翼が原因となることがあります。

そのほか、航空機の設計運用域を超えた運用、エンジン設計仕様の超過運用、さらには渦流や高温空気の侵入もサージングを引き起こす原因として知られています。

関連項目

• - F-14 (戦闘機): エンジン換装前のA型機はコンプレッサーストールを起こすことがありました。
• - トップガン (映画): 訓練や戦闘中にコンプレッサーストールが起こるシーンが描かれています。
• - コアロック: エンジン内部のタービン軸受部が冷却不良によって固着し、再始動が難しくなる現象です。

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