クーファ

クーファ：イスラム世界を揺るがした古代都市の歴史

イラク、ナジャフ県に位置するクーファは、イスラム教の歴史において極めて重要な役割を果たした都市です。7世紀前半、預言者ムハンマドの側近であったサアド・イブン・アビー・ワッカースによって建設された軍事都市としてその歴史が始まりました。建設年は諸説ありますが、636年から640年の間とされています。

建設と初期の発展

クーファは、バスラに次ぐイスラム勢力の拠点として計画的に建設されました。正方形に近い形状の外郭に囲まれた都市は、中心にモスクと知事の庁舎を配し、アラブ遊牧民が部族ごとに居住区を形成していました。ウマイヤ朝初期までには、約14万人のアラブ人が移住し、後に現地住民も加わり、商工業も盛んになりました。

アリーとシーア派の聖地

第4代カリフのアリーがクーファを首都と定めた時期もありましたが、アリーの死後、その地位は失われました。しかし、アリーを敬愛するシーア派の人々が数多く住むようになり、反乱や反政府運動の温床ともなりました。アリーの子フサインを擁した反乱や、過激シーア派のムフタールの反乱など、クーファは幾度となく混乱の渦中に巻き込まれました。

アッバース革命と繁栄

アッバース革命においては、クーファが革命の中心地となりました。749年には、アッバース朝の創始者アッバース・アス=サッファフがクーファで即位し、一時的にアッバース朝の首都となりました。中国の旅行家、杜環は『経行記』の中でクーファについて詳細な記録を残しており、クーファに関する貴重な初期の史料となっています。

バグダードへの首都移転と学問の中心地

その後、アッバース朝の第2代カリフ・マンスールは、反体制的な勢力が集まるクーファを離れ、バグダードを新都として建設しました。これにより、クーファの政治的・軍事的重要性はやや低下しましたが、イスラム法学やコーラン解釈学の中心地としての地位は維持されました。ハナフィー学派の創始者アブー・ハニーファもクーファ出身です。また、独特の書体であるクーフィー体もクーファに由来しています。

衰退と現代

14世紀の旅行家イブン・バットゥータは、治安の悪化によって荒廃したクーファの様子を『大旅行記』の中で伝えています。現代においても、クーファはシーア派と深く関わり、イラク戦争後にはシーア派指導者ムクタダー・アッ＝サドルの拠点ともなり、政府やアメリカ軍との衝突も発生しました。

クーファ大モスク

7世紀に建設されたクーファ大モスクは、幾度かの改修を経て、金色のドームとサファヴィー朝時代のタイル装飾が施された壮麗な建物となっています。初期のモスクは、長方形の広場に濠を巡らせただけの簡素なもので、壁は存在せず、南側に広がる柱廊で礼拝が行われていたと言われています。

まとめ

クーファは、その歴史を通して、イスラム教の発展、政治的・宗教的闘争、そして学問の発展に深く関与してきました。古代からの歴史、シーア派との深い繋がり、そして重要な建築物など、クーファは複雑で魅力的な歴史を持つ都市です。現代においても、イラクの政治情勢において重要な役割を果たし続けています。クーファの歴史を理解することは、イスラム世界の歴史を理解する上で不可欠です。

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