ザ・スパイダースのゴー・ゴー・向こう見ず作戦

ザ・スパイダースのゴー・ゴー・向こう見ず作戦

『ザ・スパイダースのゴー・ゴー・向こう見ず作戦』は、1960年代後半の日本で絶大な人気を誇ったグループサウンズ、ザ・スパイダースが初めて主演を務めた記念すべき日活映画です。1967年8月26日に公開され、カラー、シネマスコープによる鮮烈な映像で、当時の若者のエネルギーと自由奔放な精神を捉えました。上映時間は81分。

物語の概要

物語は、あるテレビ番組の素人歌謡コンクールで幕を開けます。そこで見事優勝を果たした美しい娘、チノが、司会者からの「どんな男性がタイプか」という問いに対し、「愛のためならどんな障害物も恐れず、ただひたすらに自分のところへ向かってきてくれる人」と答えます。この純粋かつ型破りな発言が、物語の核心となる「向こう見ず作戦」の発端となるのです。

チノの言葉に感銘を受けた、あるいは触発された七人組の若者たち――他ならぬザ・スパイダースのメンバー――は、その言葉を文字通り受け止め、前代未聞の挑戦を決意します。それは、横浜港から東京まで、途中の障害物を一切迂回せず、文字通り一直線に進むという、常識外れの行進でした。道路、建物、塀、川、時には個人の家や私有地といった様々な障害が彼らの行く手に立ちはだかりますが、彼らは持ち前のチームワークとユーモア、そして向こう見ずな情熱でそれらを乗り越えていきます。

この 직선行進は、単なる物理的な移動ではなく、当時の若者たちが抱えていた抑圧からの解放や、既成概念への反抗、そして目標に向かって脇目も振らず突き進むことの清々しさを象徴しているかのようです。行進の過程で、彼らは様々な人々と出会い、予期せぬトラブルに見舞われながらも、友情や絆を深めていきます。彼らの奇抜な行動は、周囲を驚かせ、時には騒動を巻き起こしながらも、どこか人々の心に響くものがありました。

制作スタッフと出演者

本作のユニークな世界観を作り上げたのは、才能あるスタッフ陣です。脚本は、後に「北の国から」などで知られることになる倉本聰と才賀明が担当。独創的なアイデアを、青春ドラマとして魅力的に描き出しています。メガホンを取ったのは斎藤武市監督。リズミカルな展開と、キャストの個性を引き出す演出で、作品に勢いを与えています。撮影は山崎善弘、美術は中村公彦、音楽は小杉太一郎、スチルは坂東正男、録音は高橋三郎がそれぞれ担当しました。

出演は、主演のザ・スパイダースのメンバー全員です。リーダーの田辺昭知（昭知役）をはじめ、井上孝之（孝之役）、井上順（順役）、堺正章（正章役）、大野克夫（克夫役）、ムッシュかまやつ（ひろし役）、加藤充（充役）が、彼ら自身の名前を冠した役で登場し、自然体の演技を見せています。ヒロインのチノ役には、日活青春路線の看板女優の一人であった松原智恵子。彼女の存在が、物語に華やかさとロマンチックな要素を加えています。

ザ・スパイダース以外のキャストも多士済々です。山内賢（健役）や和田浩治（浩治役）、杉山元（英介役）、木下雅弘（光彦役）といった当時の若手俳優陣が脇を固めるほか、島村謙三がテレビ司会者役、柴田新三がテレビ局員菅井役、内田朝雄が三上教授役、新井麗子が三上妻役で出演。さらに、平凡太郎とその妻役のイーデス・ハンソン、間男役の林家こん平、そしてベテラン落語家である柳家金語楼が健の父役で出演しており、物語にユーモアと深みを与えています。

作品の位置づけ

『ザ・スパイダースのゴー・ゴー・向こう見ず作戦』は、グループサウンズの最盛期に制作された作品であり、当時のスターであったザ・スパイダースの魅力を映像に収めた貴重な記録です。同時に、日活が量産した青春映画の一つとしても位置づけられます。その中でも、奇想天外なストーリー展開と、既成概念に囚われない若者のエネルギーを描いた点で、異彩を放っています。GSファンはもちろんのこと、1960年代の日本映画や若者文化に関心のある人々にとっても、見ごたえのある一作と言えるでしょう。

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