ザ・タイガース 世界はボクらを待っている
1960年代後半、日本列島を席巻したグループサウンズ（GS）ブーム。その頂点に君臨していたザ・タイガースが、銀幕の世界に初挑戦した記念すべき作品が、1968年に公開された『ザ・タイガース 世界はボクらを待っている』です。
東宝と渡辺プロダクションが手を組み製作された本作は、人気絶頂のザ・タイガースを主演に迎え、彼らの魅力を最大限に引き出すべく企画されました。監督を務めたのは、当時、ザ・ドリフターズやコント55号といった人気コメディアンたちの主演映画を次々と手掛けていた和田嘉訓。脚本は、『若大将シリーズ』やクレージーキャッツ主演作など、東宝の数多くの娯楽映画を世に送り出した田波靖男が担当しています。また、後に市川崑監督作品や、沢田研二主演の『魔界転生』で名を馳せる長谷川清が撮影を手掛けており、錚々たる顔ぶれが制作に携わっています。
物語は、遠いアンドロメダ星からやってきた王女シルビィと、ザ・タイガースの人気者ジュリー（沢田研二）を中心に展開する、ファンタジックなSFコメディです。婚約に悩む王女シルビィが、気分転換の宇宙ドライブ中に地球のザ・タイガースの音楽に魅せられ、日本の砂浜に不時着してしまうことから始まります。タイガースのコンサート会場で騒動に巻き込まれ気絶したシルビィは、メンバーたちに助けられ、特にジュリーに心惹かれていきます。追っ手から逃れるため、シルビィは男装してバンドボーイとしてタイガースと行動を共にすることに。メンバーとの楽しい日々が描かれますが、やがて追っかけファンに女性であることが露見し、物語は急展開を迎えます。
本作の大きな特徴の一つは、タイガースのヒット曲がふんだんに盛り込まれている点です。全編に10曲以上の挿入歌が使用され、映画の半分近くが彼らの歌唱シーンに費やされています。これは、当時のタイガースが極めて多忙であり、撮影時間を十分に確保できなかった事情も影響しています。和田監督自身も、短時間での撮影と多数の挿入歌を盛り込むためにさまざまな場面設定が必要となり、ストーリーの進行にはやや強引な部分が見られることを認めています。物語自体はシンプルにならざるを得なかった側面もあるわけですが、映画館に詰めかけたファンたちは、スクリーンに映し出されるメンバーに熱狂的な声援を送ったといわれています。
特に印象的なシーンとして、ジュリーがカメラ目線で観客に直接語りかける、いわゆる「第四の壁」を破る演出があります。「映画館でご覧のみなさんも一緒にお願いします」と呼びかけるこの場面は、後の様々な作品に影響を与えたといわれ、特に人気ゲーム『MOTHER』のエンドロールにおけるプレイヤー名の表示演出のヒントになったとも語られています。
共演者にも注目すべき顔ぶれが見られます。アンドロメダ星の王女シルビィを演じたのは、当時タイガースと同じ渡辺プロダクション所属の新人歌手、久美かおりです。彼女は劇中でタイガースと美しいハーモニーを奏でるデュエット曲「星のプリンス」を披露しており、本作以後、ザ・タイガース主演映画全3作のヒロインを務めることになります。また、特別出演として、当時「星の王子様」を自称していた五代目三遊亭圓楽がナルシス殿下役で登場。さらに、和田監督作品の常連である天本英世がシルビィの従者を、そして小沢昭一がタイガースの警備にあたる刑事を演じるなど、個性的なキャストが脇を固めています。
視覚的な面では、劇中に登場する円盤のミニチュアが、東宝の特撮映画『怪獣大戦争』（1965年）で使用されたX星人の円盤を流用している点も、映画ファンにとっては興味深いエピソードでしょう。
クライマックスでは、武道館でのコンサートと、宇宙船に連れ去られたジュリーの運命が描かれます。タイガースの演奏が宇宙船の飛行に影響を与えるという展開の中、離れた場所にいるジュリーと武道館のメンバー、そして観客が一体となって「シーサイド・バウンド」を演奏・合唱するシーンは、観客のボルテージを最高潮に高めました。最終的にシルビィはジュリーがファンみんなのものであることを悟り宇宙へ帰っていきますが、タイガースは彼女のために新曲「銀河のロマンス」を捧げるように演奏し、物語は幕を閉じます。
本作は、ザ・タイガース主演映画3部作の第一弾ですが、東宝が単独で製作したのは本作のみであり、次作以降は東京映画が渡辺プロと共に製作を行っています。同時上映されたのは、同じく人気コメディアンであるザ・ドリフターズ主演の『ドリフターズですよ!盗って盗って盗りまくれ』でした。
サウンドトラック盤も、映画公開直後にポリドールからリリースされています。アルバムタイトルは映画と同名で、「ザ・タイガース 世界はボクらを待っている」ですが、その英題「THE WORLD IS WAITING FOR US」は、ジャズのスタンダード「THE WORLD IS WAITING FOR THE SUNRISE（世界は日の出を待っている）」からの引用と考えられています。収録曲は既発のシングル曲を中心に構成され、新曲「イエロー・キャッツ」などが収録されています。
1998年にVHSソフト化された後、2007年と2014年にはDVDも発売されており、時代を超えてザ・タイガースの魅力を伝える一作として、今も多くのファンに親しまれています。
東宝と渡辺プロダクションが手を組み製作された本作は、人気絶頂のザ・タイガースを主演に迎え、彼らの魅力を最大限に引き出すべく企画されました。監督を務めたのは、当時、ザ・ドリフターズやコント55号といった人気コメディアンたちの主演映画を次々と手掛けていた和田嘉訓。脚本は、『若大将シリーズ』やクレージーキャッツ主演作など、東宝の数多くの娯楽映画を世に送り出した田波靖男が担当しています。また、後に市川崑監督作品や、沢田研二主演の『魔界転生』で名を馳せる長谷川清が撮影を手掛けており、錚々たる顔ぶれが制作に携わっています。
物語は、遠いアンドロメダ星からやってきた王女シルビィと、ザ・タイガースの人気者ジュリー（沢田研二）を中心に展開する、ファンタジックなSFコメディです。婚約に悩む王女シルビィが、気分転換の宇宙ドライブ中に地球のザ・タイガースの音楽に魅せられ、日本の砂浜に不時着してしまうことから始まります。タイガースのコンサート会場で騒動に巻き込まれ気絶したシルビィは、メンバーたちに助けられ、特にジュリーに心惹かれていきます。追っ手から逃れるため、シルビィは男装してバンドボーイとしてタイガースと行動を共にすることに。メンバーとの楽しい日々が描かれますが、やがて追っかけファンに女性であることが露見し、物語は急展開を迎えます。
本作の大きな特徴の一つは、タイガースのヒット曲がふんだんに盛り込まれている点です。全編に10曲以上の挿入歌が使用され、映画の半分近くが彼らの歌唱シーンに費やされています。これは、当時のタイガースが極めて多忙であり、撮影時間を十分に確保できなかった事情も影響しています。和田監督自身も、短時間での撮影と多数の挿入歌を盛り込むためにさまざまな場面設定が必要となり、ストーリーの進行にはやや強引な部分が見られることを認めています。物語自体はシンプルにならざるを得なかった側面もあるわけですが、映画館に詰めかけたファンたちは、スクリーンに映し出されるメンバーに熱狂的な声援を送ったといわれています。
特に印象的なシーンとして、ジュリーがカメラ目線で観客に直接語りかける、いわゆる「第四の壁」を破る演出があります。「映画館でご覧のみなさんも一緒にお願いします」と呼びかけるこの場面は、後の様々な作品に影響を与えたといわれ、特に人気ゲーム『MOTHER』のエンドロールにおけるプレイヤー名の表示演出のヒントになったとも語られています。
共演者にも注目すべき顔ぶれが見られます。アンドロメダ星の王女シルビィを演じたのは、当時タイガースと同じ渡辺プロダクション所属の新人歌手、久美かおりです。彼女は劇中でタイガースと美しいハーモニーを奏でるデュエット曲「星のプリンス」を披露しており、本作以後、ザ・タイガース主演映画全3作のヒロインを務めることになります。また、特別出演として、当時「星の王子様」を自称していた五代目三遊亭圓楽がナルシス殿下役で登場。さらに、和田監督作品の常連である天本英世がシルビィの従者を、そして小沢昭一がタイガースの警備にあたる刑事を演じるなど、個性的なキャストが脇を固めています。
視覚的な面では、劇中に登場する円盤のミニチュアが、東宝の特撮映画『怪獣大戦争』（1965年）で使用されたX星人の円盤を流用している点も、映画ファンにとっては興味深いエピソードでしょう。
クライマックスでは、武道館でのコンサートと、宇宙船に連れ去られたジュリーの運命が描かれます。タイガースの演奏が宇宙船の飛行に影響を与えるという展開の中、離れた場所にいるジュリーと武道館のメンバー、そして観客が一体となって「シーサイド・バウンド」を演奏・合唱するシーンは、観客のボルテージを最高潮に高めました。最終的にシルビィはジュリーがファンみんなのものであることを悟り宇宙へ帰っていきますが、タイガースは彼女のために新曲「銀河のロマンス」を捧げるように演奏し、物語は幕を閉じます。
本作は、ザ・タイガース主演映画3部作の第一弾ですが、東宝が単独で製作したのは本作のみであり、次作以降は東京映画が渡辺プロと共に製作を行っています。同時上映されたのは、同じく人気コメディアンであるザ・ドリフターズ主演の『ドリフターズですよ!盗って盗って盗りまくれ』でした。
サウンドトラック盤も、映画公開直後にポリドールからリリースされています。アルバムタイトルは映画と同名で、「ザ・タイガース 世界はボクらを待っている」ですが、その英題「THE WORLD IS WAITING FOR US」は、ジャズのスタンダード「THE WORLD IS WAITING FOR THE SUNRISE（世界は日の出を待っている）」からの引用と考えられています。収録曲は既発のシングル曲を中心に構成され、新曲「イエロー・キャッツ」などが収録されています。
1998年にVHSソフト化された後、2007年と2014年にはDVDも発売されており、時代を超えてザ・タイガースの魅力を伝える一作として、今も多くのファンに親しまれています。
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