ザ・ナイトウォッチ -夜を支配した人々-

ザ・ナイトウォッチ -夜を支配した人々- (The Nightwatch Live at the Amsterdam Concertgebouw November 23rd 1973)

1997年にリリースされたキング・クリムゾンの2枚組ライブ・アルバム『ザ・ナイトウォッチ -夜を支配した人々-』は、プログレッシブ・ロック史に名を刻むバンドの貴重なライブパフォーマンスを捉えた作品です。本作には、1973年11月23日にオランダのアムステルダムにあるコンセルトヘボウで行われた公演の模様が収められています。

当時のキング・クリムゾンは、パーカッショニストのジェイミー・ミューアがバンドを離れた後、ロバート・フリップ（ギター、メロトロン）、ジョン・ウェットン（ベース、ヴォーカル）、デヴィッド・クロス（ヴァイオリン、ヴィオラ、メロトロン）、ビル・ブルーフォード（ドラムス、パーカッション）という4人の布陣で活動していました。彼らは同年3月に傑作アルバム『太陽と戦慄』を発表した後、精力的なツアー活動を展開します。3月中旬から約3ヶ月をかけてアメリカを約60回公演で回り、短い休暇を挟んだ後、9月からは再びツアーを再開。アメリカで19回、ヨーロッパで24回の公演をこなすという、非常に長期間かつ過酷なスケジュールをこなしていました。メンバーは連日のライブによる疲労と向き合いながらも、これらの公演で『太陽と戦慄』の収録曲を中心に、ツアー中の即興演奏や、わずかな休暇期間に生まれた新曲などを披露していたのです。

このアムステルダム公演を収めた本作の付属ブックレットによれば、翌1974年にリリースされるアルバム『暗黒の世界』に収録されることになる楽曲の初期演奏テイクが本作には収められています。具体的には、「突破口」の原型、「夜を支配する人」の冒頭部分、「暗黒の世界」、そして「トリオ」のオリジナル音源などが含まれているとされています。これらの楽曲が、完成形に至る前のライブでどのように演奏されていたのかを知る上で、本作は非常に価値のある音源と言えるでしょう。

特に、「夜を支配する人」の演奏中に聴かれる特徴的なノイズは、デヴィッド・クロスが使用していたメロトロンの機材トラブルによって生じたものであることが指摘されています。曲の他の箇所では、クロスはホーナー・ピアノを用いて印象的な即興演奏を披露しており、当時のライブにおける予期せぬアクシデントやメンバーの対応力を感じさせます。また、このアムステルダム公演のオープニングでは「太陽と戦慄 パートI」が演奏された可能性が指摘されていますが、現存するマスターテープからは発見されず、残念ながら本作には未収録となっています。

過酷なツアーの中で研ぎ澄まされていったバンドの演奏力、即興演奏を含むスリリングなステージ、そして次作へと繋がる楽曲の胎動を捉えた本作は、この時期のキング・クリムゾンを知る上で欠かせないライブアルバムです。

収録曲

Disc 1
1. イージー・マネー (Easy Money)
2. 人々の嘆き (Lament)
3. 土曜日の本 (Book Of Saturday)
4. 突破口 (Fracture)
5. 夜を支配する人 (The Night Watch)
6. インプロヴィゼイション：スターレス・アンド・バイブル・ブラック (Improv:Starless And Bible Black)

Disc 2
1. インプロヴィゼイション：トリオ (Improv:Trio)
2. 放浪者 (Exiles)
3. インプロヴィゼイション：フライト・ウォッチ (Improv:The Fright Watch)
4. トーキング・ドラム (The Talking Drum)
5. 太陽と戦慄 パートII (Larks' Tongues In Aspic(Part II))
6. 21世紀のスキッツォイド・マン (21st Century Schizoid Man)

メンバー

ロバート・フリップ – ギター、メロトロン
ジョン・ウェットン – ベースギター、ヴォーカル
ビル・ブルーフォード – ドラムス、パーカッション
デヴィッド・クロス – ヴァイオリン、ヴィオラ、メロトロン

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