ザ・ベスト・オブU2 1980-1990

『ザ・ベスト・オブU2 1980-1990』

『ザ・ベスト・オブU2 1980-1990』（原題：The Best of 1980-1990）は、アイルランドが生んだ世界的なロックバンド、U2が1980年から1990年までの約10年間に発表した楽曲の中から厳選されたベスト・アルバムです。この時期は、U2がその独自のサウンドを確立し、世界的な成功を収めていった重要な時代であり、本作はその軌跡を辿る上で欠かせない作品となっています。

作品の構成と選曲

このベストアルバムの大きな特徴は、彼らのエネルギッシュなライブパフォーマンスで長年愛されてきた「ライブの定番曲」を中心に選曲されている点です。スタジオ録音された楽曲でありながら、ライブ会場での熱狂や感動を想起させるような、バンドの真骨頂とも言える楽曲群が収められています。この選曲方針は、U2というバンドがいかにライブ活動を重視し、ファンとの繋がりを大切にしてきたかを物語っています。

本作は通常盤と初回限定盤の2枚組で構成されています。

ディスク-1（通常盤）

通常盤となるディスク-1には、この期間のU2を代表するヒット曲やライブでのハイライトとなる楽曲がバランス良く収録されています。例えば、「プライド - Pride (In the Name of Love)」、「ニュー・イヤーズ・デイ - New Year's Day」、「ウィズ・オア・ウィズアウト・ユー - With or Without You」、「アイ・スティル・ハヴント・ファウンド・ホワット・アイム・ルッキング・フォー（終りなき旅） - I Still Haven't Found What I'm Looking For」といった、その後の彼らのキャリアを支えることとなる不朽の名曲の数々が並びます。

また、社会的なメッセージ性の強い「ブラディ・サンデー - Sunday Bloody Sunday」や、感動的なアンセムである「ホエア・ザ・ストリーツ・ハヴ・ノー・ネイム（約束の地） - Where the Streets Have No Name」など、彼らの多様な音楽性とテーマを示す楽曲も収録されています。

初期の衝動的なエネルギーを感じさせる「アイ・ウィル・フォロー - I Will Follow」から、円熟期へと向かうサウンドを示唆する「焔（ほのお） - The Unforgettable Fire」、グラミー賞を獲得した「ディザイアー - Desire」や「ラヴ・カムズ・トゥ・タウン - When Love Comes to Town」といった楽曲も収録され、1980年代における彼らの音楽的な進化を概観することができます。「スウィーテスト・シング (シングル・ミックス) - Sweetest Thing (The Single Mix)」のように、ベスト盤のためにリミックスされたバージョンが収められている点も特筆すべきでしょう。

さらに、日本盤にはボーナストラックとして「ワン・トゥリー・ヒル - One Tree Hill」が追加収録されており、アルバムの最後には隠しトラックとして初期の楽曲「オクトーバー - October」が収められています。これらの追加曲は、日本独自のファンサービスや遊び心といった側面も持ち合わせています。

ディスク-2（初回限定盤）

初回限定盤に付属するディスク-2は、シングル盤のB面曲を集めたファン垂涎の内容となっています。当時（1998年）日本では約20万セットの限定生産とされており、その希少性も相まって、長年のファンにとっては非常に価値の高い一枚と言えるでしょう。

このディスクには、「ザ・スリー・サンライゼズ - The Three Sunrises」や「ルミナス・タイム（ホールド・オン・トゥ・ラヴ） - Luminous Times (Hold on to Love)」といった、アルバムには未収録ながら個性的な楽曲が多数収められています。また、パティ・スミスの「ダンシング・ベアフート - Dancing Barefoot」やラヴ・アフェアーの「エバーラスティング・ラブ - Everlasting Love」、ライチャス・ブラザーズの「アンチェインド・メロディー - Unchained Melody」といったカバー曲も含まれており、彼らの音楽的なルーツや影響、そして原曲をU2らしい解釈で昇華させる手腕を知ることができます。

これらのB面曲は、アルバムの世界観からは独立した、より実験的であったり、あるいは純粋な楽しさや哀愁を帯びていたりと、バンドの多様な側面を垣間見せる貴重な音源群です。

作品の意義

『ザ・ベスト・オブU2 1980-1990』は、U2が真の世界的バンドへと飛躍を遂げた1980年代の活動を網羅した決定版ベストアルバムとして、その後の彼らのキャリアを振り返る上での礎となっています。彼らの初期の情熱から、世界的な成功を経て円熟へと向かう音楽性の変化、そしてライブバンドとしての圧倒的な魅力を、この一枚（または二枚）で体験することができます。初めてU2を聴くリスナーにとっては最適な入門盤であり、長年のファンにとっては活動の軌跡を再確認し、貴重な音源を楽しめる必携のアイテムと言えるでしょう。

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