ザ・ミラクル

クイーン13枚目のアルバム『ザ・ミラクル』

『ザ・ミラクル』（The Miracle）は、イギリスのロックバンド・クイーンが1989年に発表した13枚目のアルバムです。

リリースと背景

このアルバムは、レコードとCDで同時発売されましたが、収録時間の関係でレコード版は短く編集されています。また、CD版にはボーナストラックが追加されており、CDでのリリースを前提として制作されたと考えられます。

当初のアルバムタイトルは『The Invisible Man』でしたが、リリース直前に現在の『The Miracle』に変更されました。

長い活動休止とメンバーのソロ活動を経てリリースされた本作は、音楽的な活気に満ち溢れています。ファンはクイーンのライブ活動再開を期待しましたが、フレディ・マーキュリーは当時のインタビューで、このアルバムに伴うツアーを行わないことを明言しました。1980年代後半、アメリカや日本ではクイーンの人気が一段落していましたが、イギリスを含むヨーロッパ各国や南米では依然として高い人気を誇っていました。

この頃のクイーンは、スタジオでのセッションを通じて楽曲を制作する方法が多くなり、全曲がメンバー全員の共作としてクレジットされました。また、アルバムに収録しきれない楽曲は、CDシングルのカップリング曲として発表されたり、次作アルバムのレコーディングにすぐに取り掛かるなど、制作意欲が非常に旺盛でした。

フレディ・マーキュリーは、このアルバム制作中に自身のHIV感染をメンバーに告白したとされています。

アルバムジャケット

4人の顔を合成したジャケットは、当時の話題を呼びました。これは、バラバラになりかけていた4人が再び一体となっていることを表現していると言われています。また、映像作品『グレイテスト・ビデオ・ヒッツ2』のジャケットにも採用されています。

ブライアン・メイは、2022年のインタビューで「当時はフォトショップがなかったため、巨大な機械を使ってアートワークを作成する必要があった」と語っています。

収録曲

1. パーティ - Party
2. カショーギの船 - Khashoggi's Ship
3. ザ・ミラクル - The Miracle
4. アイ・ウォント・イット・オール - I Want It All
5. インビジブル・マン - The Invisible Man
6. ブレイクスルー - Breakthru
7. レイン・マスト・フォール - Rain Must Fall
8. スキャンダル - Scandal
9. マイ・ベイビー・ダズ・ミー - My Baby Does Me
10. 素晴らしきロックン・ロール・ライフ - Was It All Worth It

ボーナストラック

1. ハング・オン・イン・ゼア - Hang On In There
2. チャイニーズ・トーチュアー - Chinese Torture
3. インビジブル・マン（12インチ・ヴァージョン） - The Invisible Man (12" Version)

収録曲解説

パーティ
フレディ、ブライアン、ジョンのジャムセッションから生まれた楽曲。フレディがピアノを弾きながら「we had a good night」と歌い、3人が交代で曲を完成させました。ブライアンが一部でリードボーカルを担当しています。この曲は、クイーン名義での作曲と見なせる唯一の曲です。

カショーギの船
フレディを中心に、全員が歌詞と曲を提供した楽曲。有名な億万長者アドナン・カショギと彼の所有するメガヨットをテーマにしています。アルバムでは『パーティ』からシームレスに繋がり、歌詞のテーマも類似しています。ミュージカル『ウィ・ウィル・ロック・ユー』では、カショーギというキャラクター名に使用されました。

レイン・マスト・フォール
ジョンとフレディの共作。ロジャーが演奏したラテンパーカッションは、ボーカルハーモニー、ギター、キーボードのため取り消され、フレディとジョンが共同作業しています。

マイ・ベイビー・ダズ・ミー
フレディとジョンの共作。アルバムを緩和するために制作されたシンプルな楽曲。ベースラインは、二人がお互いに構成したとされています。

素晴らしきロックン・ロール・ライフ
フレディによって作曲された楽曲。1970年代の複雑なサウンドに回帰しています。歌の大部分はフレディが考案しましたが、メンバー全員がアイデアや歌詞を提供しました。ジョンはこのアルバムのお気に入りの曲として挙げています。

参加ミュージシャン

クイーン

フレディ・マーキュリー - リードボーカル、コーラス、ピアノ、キーボード、シンセサイザー、ドラムマシン
ブライアン・メイ - エレクトリックギター、アコースティックギター、リードボーカル、コーラス、キーボード
ジョン・ディーコン - エレクトリックベース、エレクトリックギター、キーボード
ロジャー・テイラー - ドラムス、コーラス、パーカッション、キーボード、ドラムマシン、サンプラー

外部ミュージシャン

デヴィッド・リチャーズ - キーボード、シンセサイザー、ミュージックシーケンサー、シンセベース、サンプラー、プログラミング


このアルバムは、クイーンの音楽性の多様性と、メンバー間の創造的なコラボレーションを体現した作品と言えるでしょう。

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