ザ・リターン・オブ・ビデオ・ゲーム・ミュージック

『ザ・リターン・オブ・ビデオ・ゲーム・ミュージック』は、日本のゲームメーカーであるナムコが1983年から1985年にかけてゲームセンター向けに発表したアーケードゲーム作品のサウンドを中心に構成された音楽アルバムです。

前年にリリースされた同傾向のアルバム『ビデオ・ゲーム・ミュージック』や『スーパーゼビウス』とは異なり、これらの作品でプロデューサーとして携わった音楽家の細野晴臣氏は、本作の制作には関わっていません。しかし、アルバム全体のプロデュースは、前2作でもアルバム制作に携わっていた近藤雅信氏が担当しました。楽曲のアレンジメントには、上野耕路氏、国本佳宏氏、藤井丈司氏、飯尾芳史氏といった才能あるアレンジャーたちが参加し、各ゲームの印象的なメロディーに新たな息吹を吹き込んでいます。

このアルバムの大きな特徴として挙げられるのが、アナログレコードのB面（またはカセットテープの後半）に収録された4曲のオリジナル楽曲です。これらは、ナムコのサウンド開発に携わるスタッフによって生み出されたもので、特定のゲームの原曲を持たない、このアルバムのために書き下ろされた楽曲でした。当時としてはゲーム音楽のサントラにおいてこのような試みは珍しく、大変意欲的な取り組みでした。興味深いことに、これらのオリジナル曲の中には、後に実際のナムコのゲーム作品に採用されるという「逆転現象」を生んだものも存在します。

アルバムのライナーノーツには、当時ナムコのサウンド開発者であった小沢純子氏による、『ドルアーガの塔』のゲームBGMがどのようにして開発されたのかという秘話「MAKING OF DRUAGA MUSIC」が掲載されており、当時のゲーム音楽制作の舞台裏を知ることができる貴重な資料となっています。また、本作は発売時期によって装丁が大きく異なっているのも特徴の一つです。

当初はアナログレコード盤とカセットテープという形態でのみ販売されていましたが、1986年4月25日には、『ザ・ベスト・オブ・ビデオ・ゲーム・ミュージック』という形で初めてCD化されました。このCDには、本作のA面楽曲と『ビデオ・ゲーム・ミュージック』の楽曲がカップリングという形で収められています。その後、2001年にはサイトロンディスクより、アルバム単体として初めてのCDリリースが実現しました。この2001年盤のCDには、オリジナルの復刻版ライナーノーツに加え、当時の制作背景や収録されたゲームに関するエピソードなどを記した新たなブックレットが同梱され、ファンにとってはより深く作品世界に触れることができる内容となっています。

主な収録曲

SIDE A (ゲーム原曲・アレンジ)

FANFARE FROM POLE POSITION II: 『ポールポジションII』の予選スタート時のファンファーレを上野耕路氏がアレンジ。
GROBDA: 『グロブダー』より。
DIG DUG II: 『ディグダグII』より。
DRAGON BUSTER: 『ドラゴンバスター』より。ゲーム中未使用だったゲームクリア想定楽曲も収録されています。
METRO CROSS (PART I): 『メトロクロス』より。
GAPLUS: 『ギャプラス』より。
THE TOWER OF DRUAGA: 『ドルアーガの塔』より。ほぼ原曲に近いながら、リバーブ処理が強調されています。

SIDE B (オリジナル楽曲など)

MOOD ORGAN #27: オリジナル楽曲。曲中に『グロブダー』のゲーム中ボイスや効果音がサンプリングされています。
META MAGIC GAME: オリジナル楽曲。後にファミリーコンピュータ用ソフト『ケルナグール』に転用されました。『ドラゴンバスター』のアイテム取得音も使用されています。
MERRY GOES AROUND (DEDICATED TO MARIKO KUNIMOTO): オリジナル楽曲。後にゲーム『ホッピングマッピー』に転用されました。
STANDARD THEME: オリジナル楽曲。
MECHANISM OF VISION (NINO ROTAの自画像[JERRY GOLDSMITHもそこにいる。]): 上野耕路氏による楽曲。本アルバム中、唯一ナムコのサウンド開発者が直接関わっていない曲で、映画音楽家のニーノ・ロータ氏らにインスパイアされています。上野氏のソロアルバムでも再録されました。
* METRO CROSS (PART II): 『メトロクロス』のネームレジスト画面のBGMをアレンジしたものです。

このように、『ザ・リターン・オブ・ビデオ・ゲーム・ミュージック』は、当時のナムコのアーケードゲームサウンドをまとめるだけでなく、オリジナル楽曲を収録するという先駆的な試みを含んだ、ゲーム音楽史においても注目すべき一枚と言えるでしょう。

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