ザ・リッピントンズ

ザ・リッピントンズ：L.A.フュージョンの輝き

ザ・リッピントンズ（The Rippingtons）は、ギタリストであるラス・フリーマンの主導のもと、1985年に産声を上げたスムーズ・ジャズおよびフュージョンの音楽グループです。彼らは特に、カリフォルニア州ロサンゼルスを拠点とする「L.A.スタイル」と呼ばれるフュージョン・シーンの代表的な存在の一つとして広く認識されています。

彼らの音楽の大きな特徴は、耳に心地よい軽快でポップ、そしてどこか爽やかなメロディラインにあります。それに加えて、ラテン音楽やアフリカ音楽といった多様なワールドビートの要素を巧みに融合させることで、彼ら独自のサウンドを確立しています。こうした音楽性は多くのリスナーを魅了し、特に「Tourist in Paradise」は彼らの代表曲としてしばしば挙げられます。

もう一つ、リッピントンズを視覚的に象徴するものとして、アルバムジャケットが挙げられます。デビュー以来、彼らがリリースした全てのアルバム（ライブ盤やベスト盤を含む）のカバーアートには、イラストレーターであるビル・メイヤーが手掛けたオリジナルキャラクター「ジャズ・キャット」が描かれており、バンドのマスコットとして親しまれています。

軌跡：デビューから現在まで

バンドの歴史は、1986年に発表されたアルバム『ムーンライティング』で幕を開けました。この記念すべきデビュー作には、当時から注目を集めていたサックス奏者のケニー・Gや、ピアニストのデイヴィッド・ベノワといった著名なミュージシャンがゲストとして参加しています。1989年には、バンドの評価を決定づけることとなる代表作『ツーリスト・イン・パラダイス』をリリース。特にタイトル曲では、故カール・アンダーソンの情感豊かなボーカルが印象的な響きを残しています。

アルバムごとに異なるテーマ性を持たせることもあり、例えば1991年の『カーヴス・アヘッド』では、ジャケットのアートワークや収録曲「Snowbound」といったタイトルからも、冬を意識したコンセプトが感じられます。1993年には、初のライブアルバムおよびビデオ作品となる『ライヴ・イン・L.A.』を発表。これは前年の1992年にロサンゼルスで行われたライブの記録であり、デイヴィッド・ベノワとカール・アンダーソンがゲストとして加わっています。

リーダーであるラス・フリーマンは、1994年に所属レーベルであるGRPレコード内に自身のレーベル「ピーク・レコード」を設立。これを機に、彼はバンドのメンバー構成を固定化し、より強固なバンドとしての意識を高める方向へと進みました。同年発表のアルバム『ブレイヴ・ニュー・ワールド』には、バンドとして初のフル・ボーカル楽曲も収録されています。結成10周年を迎えた1997年には、レーベルごとBMG傘下のウィンダム・ヒル・レコードに移籍し、記念碑的なアルバム『ブラック・ダイヤモンド』を発表。1999年の『トパーズ』は、アメリカ南西部の風景や音楽をテーマにした作品となりました。

その後、ウィンダム・ヒルがジャズ部門から撤退したため、2000年には再びレーベルごとコンコード・ミュージック・グループへと移籍します。同年リリースの『ライフ・イン・ザ・トロピックス』は、そのタイトルが示すように南国を意識したサウンドで、デイヴ・コーズ、エリック・マリエンサル、ピーター・ホワイト、ボブ・ジェームスといった豪華なゲストが集結しました。このアルバムへの参加がきっかけとなり、サックス奏者のエリック・マリエンサルは後にバンドのレギュラーメンバーとなります。2006年8月には、これまでのレギュラーメンバーが多数参加した20周年記念アルバム『20THアニヴァーサリー・セレブレーション』をリリース。そして、2009年発表のアルバム『モダン・アート』からは、旧メンバーのジェフ・カシワがサックス奏者としてバンドに復帰しています。

多彩な才能が集うメンバーたち

初期のザ・リッピントンズは、レコーディングにおいてはラス・フリーマン自身がギターやキーボード、プログラミングなどを手掛ける、いわば彼のソロプロジェクト的な側面が強く、ライブにおいても彼以外のメンバーは流動的でした。しかし、前述の通り1996年頃からメンバーの固定化が進み、2000年以降は主要なメンバーが定着しています。

中心人物であるラス・フリーマンはリーダーとして、ギターはもちろん、キーボードやプログラミングも担当し、結成当初から現在に至るまでバンドを牽引しています。

ギタリストであるラスがリーダーを務める一方で、このグループのサウンドにおいてはサックスが非常に重要な役割を果たしており、数多くの優れたサックス奏者が参加しているのも特筆すべき点です。過去にはケニー・G、カーク・ウェイラム、ネルソン・ランジェルといった著名なプレイヤーがゲストとして共演。また、レギュラーメンバーとしては、初期のブランダン・フィールズ（1986年-1990年）やジェフ・カシワ（1991年-1997年）、ポール・テイラー（1999年）、エリック・マリエンサル（2003年-2008年）らが在籍。現在はジェフ・カシワが2009年から再び加わっています。

ピアニストやキーボーディストもバンドの歴史を通じて変化しています。ラスの盟友でもあるデイヴィッド・ベノワや、グレッグ・カルーカスは初期メンバーでしたが、GRP時代のスタジオ録音ではラス自身がキーボードの大部分を担当することが多く、マーク・ポートマンがピアノソロなどで参加（1991年-1996年）。ピーク/ウィンダム・ヒル期にはデイヴ・コチャンスキー（1997年-2000年）、その後はビル・ヘラー（2001年-）が主なキーボード奏者となっています。

ベーシストの変遷もまた多様です。ビル・ランフィアが初期に参加した後（1986年-?）、スティーヴ・ベイリーが加わり（1989年-1990年）、以降はキム・ストーンが長年（1991年-2008年）ラス以外で最も長くバンドを支えました。現在はリコ・ベレッド（2009年-）がベースを担当しています。

ドラマーについては、トニー・モレイアスが初期のオリジナルメンバーであり、GRP時代のほぼ全てのアルバムにクレジットされています（1986年-1996年）。ピーク/ウィンダム・ヒル期はデイヴ・フーパー（1997年-1999年）が、ピーク/コンコード期以降はデイヴ・カラソニー（2000年-）がドラムを叩いています。

パーカッションもバンドのサウンドに彩りを添えてきました。スティーヴ・リードはオリジナルメンバーとして、特にラテンやワールドミュージック要素の強い楽曲で活躍し、ピークがコンコードに移るまで在籍しました（1986年-1999年）。その後、2000年にはRaman Yslas、そして2001年からはスコット・ブレッドマン（2001年-2008年）が担当しましたが、2009年の『モダン・アート』以降のアルバムにはパーカッショニストは参加していません。

また、レギュラーメンバーではありませんが、「Tourist in Paradise」をはじめとする楽曲で印象的なボーカルを聴かせたカール・アンダーソンの存在も、リッピントンズの歴史を語る上で欠かせないゲストミュージシャンの一人と言えるでしょう。

このように、ザ・リッピントンズはラス・フリーマンを中心に、時代や作品ごとに様々な才能が集まり、常に進化し続けるサウンドでスムーズ・ジャズ／フュージョン界において確固たる地位を築いています。

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