ザ・リンド&リンダース

ザ・リンド&リンダースは、1965年 8月に大阪で誕生した日本のグループ・サウンズ（GS）バンドである。特に活動拠点であった関西地方では絶大な人気を誇り、「関西GSの雄」と称される存在となった。1970年に解散したが、その後複数回にわたり再結成されている。

結成と活動

バンド結成のきっかけは、当時ジャズバンドのギタリストだった加藤ヒロシが、関西にもエレキバンドをという地元の芸能プロダクションからの要望に応じたことにある。当初は加藤をリーダーとする4人編成のエレキバンド「ザ・リンド」として出発。その後、3人のボーカリストを加え「リンダース」が誕生し、両者が統合される形で現在のバンド名となった。グループ名の「リンダース」は、リーダーの加藤がイアン・フレミングの小説に登場する美女「リンダ」を気に入ったことに由来するという。

バンドは結成当初から大阪のジャズ喫茶「ナンバ一番」などを中心に精力的にライブ活動を展開し、実力を磨いた。1967年 2月には、ボーカル加賀テツヤのソロ名義によるシングル「ギター子守唄」でフィリップスからレコードデビューを果たす。その後、同年3月にはバンド名義で「燃えろサーキット」をリリース。ラジオ番組、テレビ番組にもレギュラー出演するなど、活動の場を広げていった。特に1969年には、民放合同制作の大晦日特番『ゆく年くる年』への出演を通じて、その存在が全国に知られることとなった。

メンバー変遷と成功

しかし、初期のシングルは大きな商業的成功には結びつかなかった。経済的な問題や音楽性の相違から、デビュー翌年の1967年には高木和来、迎修二、島明男といったメンバーが脱退し、新たなバンド「ザ・サニー・ファイブ」を結成するという事態に直面する。バンドは新たなメンバーとして浜田藤丸と堀こうじを迎え入れ、体制を立て直す。これを機に、より本格的なGSサウンドへと舵を切り、再び関西のライブハウスやメディアで存在感を示していった。

1968年、ライバル視していたザ・スパイダースが他社のCMに出演したことを受け、ザ・リンド&リンダースはノーベル製菓のチョコレート「アマンド・キッス」のテレビCMに起用される。このCMが首都圏でも放送されたことで、バンドの知名度は一気に全国レベルへと上昇した。これにより、所属プロダクションは東京に事務所を設立し、首都圏での活動も本格化する。同年1月にリリースされた4枚目のシングル「銀の鎖」、そしてそのA面B面を入れ替えた「恋にしびれて」はオリコンチャートで最高42位を記録し、スマッシュヒットとなった。この頃にもメンバーの変動があり、ベースの宇野山和夫が脱退し、毛利アキが新たに加入している。続く5枚目のシングル「夕陽よいそげ」もオリコン51位と、一定の成功を収めた。

衰退と解散、そして遺産

しかし、その後はヒット曲に恵まれず、グループ・サウンズという音楽ジャンル全体のブームが衰退していく流れと共に、ザ・リンド&リンダースの人気も下降線を辿る。活動期間中にアルバム（LPレコード）を一枚も発表することなく、バンドは1970年に解散を迎えた。リーダーの加藤ヒロシは1969年にバンドを離れたとされることが多いが、中心メンバーであった加賀テツヤを中心に、1970年に開催された日本万国博覧会のステージに出演するなど、その活動は続けられた。

バンドのリーダーであった加藤ヒロシは、ギタリストとしてだけでなく、作曲家としても才能を発揮した。坂本スミ子のヒット曲「たそがれの御堂筋」や、ザ・フォーク・クルセダーズの「戦争は知らない」など、多くの著名アーティストに楽曲を提供している。特に「たそがれの御堂筋」は、元々はリンド&リンダース自身が歌うために制作された楽曲であったという。また、シモンズの「忘れられた夕やけ」も彼らが歌うことを想定して書かれたと言われている。彼らは単なるアイドル的なGSバンドではなく、ジャズやロックに根ざした高い演奏技術と音楽性を持っており、「前衛音楽会」と銘打ったコンサートも開催したとされる。しかし、前述の通りLPレコードを発表する機会がなかったため、その卓越した音楽性の全貌が後世に伝えられなかったことは惜しまれる点である。GS研究家の黒沢進氏が「ザ・リンド&リンダースがLPレコードを出さなかったことはGS七大不思議の一つ」と語ったというエピソードは、彼らのLP未発表が業界内でいかに特異であったかを物語っている。彼らの活動には、大阪梅田に事務所を構え、ゴーゴー喫茶を経営したり、馬主として競馬に携わったりと、破天荒な側面もあったことが知られている。競馬場で詩人の寺山修司と出会い、楽曲提供を受けるなど、多様な人物との交流も彼らの特色の一つであった。

その後の活動と再結成

解散から長い年月を経た2005年、主要メンバーであった加賀テツヤを中心に「加賀テツヤとリンド&リンダース」として再結成が実現した。しかし、2007年に加賀が急逝し、その後ドラムの浜田藤丸も死去したことで、活動は限定的なものとなった。2008年の加賀追悼イベントでは、榊テルオに加え、中将タカノリが一部楽曲のボーカルを務めている。そして2025年には、結成60周年を記念し、榊、宇野山、堀、中将の4名に、ゲストドラマーとして瞳みのるを迎えた形での再々結成コンサートが開催される予定となっている。

ディスコグラフィー

シングル
ギター子守唄／ギター子守唄［ギター・ソロ］（1967年 2月15日）※加賀テツヤソロ名義
燃えろサーキット／ドゥ・ザ・クラップ（1967年3月1日）※両面とも高木和来ソロ名義
売られたギター／あした陽が昇ったら（1967年 8月25日）
銀の鎖／恋にしびれて（1968年1月25日）
夕陽よいそげ／はなれぼっち（1968年5月25日）
ハ・ハ・ハ／フォー・デイズ・ラブ［四日の恋］（1968年 8月25日）
夜明けの十字架／さよならアリババ三世（1968年11月25日）
オムニバス参加
ロック天国（ピーター・ポール&マリー）
* レッツ・ゴー!グループ・サウンド第2集（1968年3月）

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