シアター座

シアター座：エリザベス朝演劇の中心地

ロンドンのショーディッチ、活気に満ちたエリザベス朝時代。シティ・オブ・[[ロンドン]]郊外に位置するこの地で、イギリス演劇史に輝く劇場が誕生しました。それがシアター座です。イングランドで2番目に、そして初めて成功を収めた常設劇場として知られています。

シアター座建設の背景

16世紀半ば、ペストの流行を懸念したロンドン市は、人々の密集を避けるため演劇の上演を禁止しました。そのため、演劇活動はロンドン市域外へと移り、ショーディッチやニューイントン・バッツといった地域で劇場建設が盛んになります。シアター座は1576年、ジェームズ・バーベッジとその義兄弟ジョン・ブレインによって、ホリウェル修道院跡地に建設されました。バーベッジは俳優座長として活躍し、演劇上演を専門とする劇場建設を志しました。この劇場はロンドン市外のショーディッチに位置していたため、市の規制を逃れ、自由に演劇活動を行うことができました。ショーディッチは当時「罪の郊外」と呼ばれ、猥雑な雰囲気を持つ地域でしたが、その自由な空気が演劇の興隆を促したと言えるでしょう。

建物の構造と運営

シアター座は多角形の木造建築で、中庭を囲むように3つのギャラリー（観覧席）が設けられていました。張り出し舞台から客席へと伸びる独特の構造は、従来の宿屋の中庭を改造した劇場の伝統を受け継いでいると考えられています。観客席は立見席からスツール席、さらに個室のような区画まであり、階級に応じて価格が設定されていました。当時の記録は断片的ですが、オランダ人デ・ウィットの記述から円形劇場のような構造であったことが推測されています。

建設資金は当時としては巨額の700ポンドに上り、バーベッジとブレインの間では資金調達や所有権をめぐる争いが絶えませんでした。建設中も上演を行い、資金を確保していたと推測されます。

シアター座とシェイクスピア

シアター座は1576年秋にオープンし、その後レスター伯一座、海軍大臣一座といった著名な劇団が拠点としました。1590年代には、宮内大臣一座が定着し、この劇団にはウィリアム・シェイクスピアが所属していました。シェイクスピアの初期作品はシアター座で初演され、彼の成功に大きく貢献したと言えます。リチャード・バーベッジ（ジェームズ・バーベッジの息子）は宮内大臣一座の看板俳優であり、シェイクスピア作品における重要な役を数多く演じました。バーベッジとシェイクスピアの協力関係は、エリザベス朝演劇の黄金時代を象徴するものです。

解体とグローブ座

シアター座は地主との土地問題に巻き込まれ、訴訟問題が頻発しました。1598年、バーベッジ兄弟は地主への反抗として、シアター座を解体し、資材をグローブ座建設へと転用しました。この大胆な行動は、演劇界に衝撃を与えました。グローブ座はシアター座の材木を用いて建設され、シェイクスピア劇の上演を続けました。

シアター座の考古学的発見

近年、ショーディッチでの発掘調査により、シアター座の基礎の一部が発見されました。この発見は、歴史的建造物の痕跡を保存し、エリザベス朝演劇の歴史を後世に伝える上で重要な意味を持ちます。

まとめ

シアター座は、単なる劇場ではなく、エリザベス朝演劇の隆盛を支えた中心地でした。シェイクスピアをはじめ、多くの著名な劇作家や俳優が活躍し、その歴史は現代の演劇にも大きな影響を与え続けています。シアター座の興亡は、時代の変化と劇場経営の困難さ、そして芸術家の創造性を象徴的に物語るものと言えるでしょう。その遺構の発見は、過去の輝きを現代に呼び覚ますとともに、今後の研究をさらに深める契機となるでしょう。

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