シアッシリ山

北海道の北部に位置するシアッシリ山は、枝幸郡枝幸町、中川郡美深町、そして紋別郡雄武町という、三つの自治体にまたがる山塊です。その標高は902.9メートルを測り、頂上には日本の測量基準点である二等三角点「志阿尻」が設置されています。

この山は、北見山地の北部に属しており、その周辺にはいくつかの峰々が連なっています。特に、西側には函岳が、南側にはピヤシリ山が位置しており、シアッシリ山を含めたこれらの山々は、この地域の自然景観を特徴づけています。

シアッシリという山名の語源については、残念ながら明確な答えが得られていません。しかし、最も有力な説として考えられているのは、アイヌ語に由来するというものです。この説によれば、山名は「シヤㇱシㇽ」という言葉が転訛したとされており、このアイヌ語は「大・破れ・山」といった意味を持つと解釈されています。ここでいう「破れ」とは、単に崩れているというだけでなく、「削られた」といった地形的な特徴を示唆していると推測されています。具体的には、北見音標川による長年の浸食作用によって、特に枝幸町側の山腹や谷筋が他の箇所に比べて深く、大きくえぐられた独特な地形を呈している点が、この「破れ」という表現の根拠となった可能性が指摘されています。

シアッシリ山は、一般的な登山道が整備されていない山です。そのため、いわゆる無雪期に笹薮などを漕いで登ることは非常に困難を伴います。この山の頂を目指す多くの登山者は、春の雪解けが進み、まだ雪が残っている残雪期を選んで入山します。雪によって笹などの植生が覆い隠されるため、比較的容易に歩を進めることができるからです。

残雪期の登山ルートとして、最もよく利用されるのは、北海道道120号下川雄武線沿いに位置する西尾峠を起点とするコースです。このルートは、西尾峠から山の稜線伝いに進み、山頂を目指すものです。途中の稜線上には、標高703メートルほどの小さなピークが存在します。このピークは、直登するよりも、その北側を大きく迂回（巻く）する形で通過するのが一般的です。これは、地形的な難所を避け、よりスムーズに、あるいは安全に山頂へと到達するための工夫とされています。このようなルート選択が必要となる点からも、シアッシリ山が一般的な登山道を持つ山とは異なり、より経験や準備を要する山であることがわかります。

このように、シアッシリ山は、その地形、山名の由来、そして独特の登山スタイルといった様々な側面から、北海道北部の自然の中でひっそりと佇む魅力的な山と言えるでしょう。整備された道がないからこそ、より自然そのままの姿を残しており、静かな山旅を求める登山者にとって、挑戦しがいのある目標となっています。

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