タブノキ

タブノキ（椨の木）とは

タブノキ（学名: Machilus thunbergii）は、クスノキ科に分類される常緑性の高木です。この木は、特に暖かい地域に自生し、別名ではイヌグス、タマグス、クスタブ、ヤブグスとも呼ばれています。また、時にはワニナシ属（Persea）に属するとされることもあります。漢字で表す際には、「椨」という国字が使用されており、「タブ」の「ブ」を「府」で表しています。

分布と生育地

タブノキは、日本の本州南部、朝鮮半島南部、中国、台湾、フィリピンなどに広く分布しています。日本国内では、東北地方南部の海岸近くや関東地方、中部地方の南部、四国、九州、沖縄、八丈島、小笠原諸島の森林に見られ、特に暖地の丘陵地に多く自生します。寒さに対する耐性と塩分にも強い特性があり、東北地方の海岸では純林が形成されることもあります。特に山形県の遊佐町や飛島においては、自然林や群落が確認されています。

タブノキは照[[葉樹林]]の代表的な樹種であり、都市公園でもよく見かけることができます。また、古来より樹霊信仰の対象とされており、日本各地には巨木が存在し、多くは神社の「鎮守の森」で大木として育っています。横浜開港資料館の中庭にある木は「玉楠」として知られ、多くの人々に親しまれています。

特徴

タブノキは常緑の広[[葉樹]]で、一般的に20メートルから30メートルの高さになり、太さが3.5メートルに達することもあります。成長は速く、株立ちでの生育が特徴です。幹の樹皮は暗褐色から淡褐色で、表面は滑らかで皮目や縦筋があり、横筋が目立つ場合もあります。また、若い枝は緑色で無毛です。

葉は互生し、樹先に集まることが多く、長さは8センチ[[メートル]]から15センチ[[メートル]]程度です。葉は倒卵形で全縁、先端は丸みを帯びています。革質で硬く、深緑色の光沢がある表面に対し、裏面は灰白色です。若葉は赤みを帯びています。

花は4月から6月頃に咲きます。新葉と同時に枝先に円錐状の花序を形成し、淡い黄緑色の目立たない小花が多数咲きます。果実は7月から8月にかけて成熟し、最初は淡緑色ですが、夏には黒紫色に変わります。この果実はクスノキ科のアボカドに似た味わいがあります。冬芽は枝先に付き、黄褐色の毛に包まれた卵形の大きな混芽を形成します。

利用

タブノキは日陰によく耐えることから、防風樹として知られています。海岸近くの公園や庭に植えられ、シンボルツリーとしても利用されています。栽培は半日陰の湿った土壌で行われ、適した植え付け時期は4月から7月の初め、もしくは9月です。剪定時期は春が推奨されています。

この木の樹皮や葉には粘液が豊富に含まれ、乾燥させて粉にするとタブ粉が得られます。昔から線香や蚊取り線香の原料として使われ、香料と混ぜ合わせて製造されています。樹皮は主に九州南部で採取されていますが、現在では東南アジア産や代用品としてデンプンが使用されることもあります。

また、タブノキの樹皮と葉はタンニンを多く含み、樹皮からは黄色い染料が取れます。材木としては、建築や家具、さらにはかつては船材としても使用されました。タブノキはその高い木が目印となり、漁業でも重要な役割を果たしていたとされています。

万[[葉集]]の詩

万[[葉集]]には、タブノキを詠んだ歌が存在します。「磯の上の都万麻を見れば根を延へて年深からし神さびにけり」という歌は、タブノキを指しているとも言われていますが、他文献での使用例がないため、確証はありません。

著名なタブノキ

• - 波崎の大タブ（茨城県神栖市）：茨城県指定天然記念物。幹周8.3メートル、樹高13.5メートル、樹齢1000年。
• - 府馬の大クス（千葉県香取市）：国の天然記念物。幹周9.2メートル、樹高19メートル、樹齢1300年。1969年の調査でタブノキであることが判明しました。

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