シェケム

シェケムの概要

シェケム（Shechem）は、旧約聖書における重要な地名であり、パレスチナの中央部、現在のヨルダン川西岸地区のナーブルス近くに位置しています。この地域にはテル・エル・バラータと呼ばれる古代遺跡が存在し、新約聖書で言及されるスカルの近くにあたると考えられています。シェケムは時折「シケム」とも表記され、特に『新共同訳聖書』でそのように記されています。

歴史的な重要性

シェケムは、アブラハムがハランを出発しカナンに入った際、最初に滞在した地の近くに位置します。彼がそこで遭遇したモレの樫の木の下で、神がアブラハムに現れ契約を更新しました。アブラハムはこの地に祭壇を築き、その後ベテルへと移動しました。このようにシェケムは、神との契約が初めて交わされた特別な場所とされています。

さらに、ヤコブもシェケムにおいて重要な出来事を経験しました。彼はパダン・アラムからの帰途、シェケムに宿営し、ハモルの息子たちから土地を購入しました。この地に祭壇を築き、その祭壇を「エル・エロヘ・イスラエル」と名付けました。また、伝承によるとヤコブが井戸を掘り、「ヤコブの泉」と呼ばれるようになった井戸は、後にヨハネの福音書第4章に登場することで知られています。

さらに続く歴史

シェケムには、ヨセフの遺体も葬られています。イスラエルのカナン占領後には、ヨシュアによって民がシェケムに招集され、集会が開かれました。この集会では、民の歴史を振り返り、神との契約の証が示され、主の聖所の樫の木の下に大きな石が立てられました。

シェケムはその後、エフライム族とマナセ族の境界となり、逃れの町やレビ人の町としても重要視されました。北イスラエル王国が形成される際、ヤロブアム1世がシェケムに王国の中心を据え、しばらくの間はヒルカノス1世の下で北イスラエル王国の首都としても機能しました。しかし、南ユダ王国からの攻撃を受け防御のため、ヤロブアム1世は首都をペヌエルやティルツァに移動させました。

ホセアやエレミヤの時代にもシェケムは重要な町でしたが、バビロン捕囚の後にはサマリアの重要な中心地へと変わっていきました。前108年にはヨハネ・ヒルカノス1世によってシェケムは破壊され、その後の歴史に大きな影響を与えることになりました。

シェケムはこのように、聖書において数々の重要な出来事が起こった場所として、多くの人々にとって忘れ難い地であり続けています。

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