シェロモ

エルネスト・ブロッホの手によるヘブライ狂詩曲『シェロモ』作品39（Schelomo）は、1916年に完成された、チェロ独奏と管弦楽のための壮大な作品です。この作品は、作曲家が自身のルーツである「ヘブライ精神」を音楽で表現しようと試みた一連の作品群の中でも、特に広く知られ、演奏される機会の多い傑作として位置づけられています。

作品名である『シェロモ』は、古代イスラエル王国の賢明な王として旧約聖書に登場する、ソロモンを指します。この名称は、ソロモンのヘブライ語名に由来しており、作品全体に流れる独特のヘブライ的な情緒の源泉となっています。独奏チェロは、しばしばこの偉大な王、ソロモン自身の声やその深遠な内面を象徴するものとして解釈されています。

この狂詩曲の着想は、彫刻家であるカサリン・バルヤンスキー（アレキサンダー・バルヤンスキー夫人）が手掛けたソロモンの像に触発されて生まれました。ブロッホは、この像から強いインスピレーションを得て、1916年の冬、ジュネーヴにて作曲を開始しました。作品は完成後、カサリンとその夫であるアレキサンダー・バルヤンスキー夫妻に献呈されています。

その記念すべき初演は、作品完成と同年の1916年5月3日、ニューヨーク楽友協会が主催した演奏会で行われました。独奏チェロは名手ハンス・キンドラーが務め、オーケストラの指揮はアーサー・ボダンスキが担当しました。この演奏会はブロッホの作品に焦点を当てたものであり、作曲家自身が指揮を務めた『イスラエル交響曲』も同じプログラムの中で演奏されました。

楽曲全体の構成は、緩やかな部分と速い部分が対比される、いわゆる緩-急-緩の三部形式を基盤として展開されます。まず、独奏チェロによって短いながらも極めて情熱的な序奏（指示はピウ・アニマート、より生き生きと）が奏でられ、聴き手を作品世界へと引き込みます。この序奏は、ソロモン王の威厳や思索を思わせる性格を持っています。続いて、弱音器をつけたヴィオラによって提示されるアンダンテ・モデラート（中庸の速さで歩くように）の部分へと移行します。この主題は、神秘的かつ内省的な響きを持ち、作品全体の核となる重要な楽想です。狂詩曲という形式の中で、楽想は自由に、そしてドラマティックに展開し、独奏チェロとオーケストラは緊密に対話し、あるいは一体となって、ソロモン王の栄光、知恵、そしておそらくその苦悩といった多面的な姿を音楽的に描き出していきます。中間部ではより活動的なリズムや明るい楽想も現れ、全体の印象に多様性をもたらしますが、作品全体には深遠な思索やヘブライ的な哀愁、あるいは力強い生命力が根底に流れています。

この狂詩曲のためにエルネスト・ブロッホが用いた楽器編成は以下の通りです。大規模なオーケストラが、独奏チェロの多彩な表現力を力強く支え、色彩豊かな音響空間を作り出しています。

独奏チェロ
ピッコロ
フルート2
オーボエ2
イングリッシュホルン
クラリネット2
バスクラリネット
ファゴット2
コントラファゴット
ホルン4
トランペット3
トロンボーン3
チューバ
ティンパニ3
小太鼓
タンブリン
大太鼓
シンバル
タムタム
チェレスタ
ハープ2
弦五部（12、10、8、6、4）

この狂詩曲の一般的な演奏時間は、およそ21分程度とされています。

この作品に関するさらなる詳細な解説は、音楽之友社より刊行されている『最新名曲解説全集10 協奏曲III』にて読むことができます。『シェロモ』は、エルネスト・ブロッホの創作活動における重要な成果であり、今日でも多くのチェリストやクラシック音楽の聴衆に愛され続けている名曲です。

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