シエラ・モレナ山脈

シエラ・モレナ山脈：イベリア半島の秘境

シエラ・モレナ山脈は、スペイン南部に位置する広大な山脈です。その名は「暗い山脈」を意味し、地質や植生に由来すると言われています。東西約450km、幅約120kmにわたり、エストレマドゥーラ州からアンダルシア州にかけて広がっています。

地理

シエラ・モレナ山脈は、イベリア半島の中央に広がるメセタと呼ばれる台地と、グアダルキビール川流域を隔てる役割を果たしています。最高峰はバニュエラ山の1,332mで、その他にもコラル・デ・ボロス山やエストレーリャ岩山などの標高1,000mを超える山々が連なります。

特徴的な地形として、デスペニャペロス峡谷が挙げられます。デスペニャペロス川が形成したこの峡谷は、メセタからアンダルシア地方への重要な交通路となっており、鉄道や高速道路が通っています。

地質

アフリカプレートの圧力によって隆起してできたシエラ・モレナ山脈は、花崗岩や石英などの硬い古生代の岩石と、スレートや片麻岩などの柔らかい岩石で構成されています。山脈の平均標高はそれほど高くありませんが、南側のグアダルキビール川流域から見ると、その斜面や渓谷は非常に印象的です。

歴史

シエラ・モレナ山脈は、古くから鉛、銀、水銀などの鉱物資源が採掘されてきました。古代イベリア人は、この山脈の峠を越えてメセタとグアダルキビール川流域を行き来していました。また、山賊や追い剥ぎの出没地としても知られており、18世紀には入植政策が導入され、治安の安定化が図られました。

スペイン内戦中には、激戦地となり、多くの戦いや小競り合いが繰り広げられました。

文化

ミゲル・デ・セルバンテスの小説『ドン・キホーテ』には、シエラ・モレナ山脈が登場します。ドン・キホーテが逃避先としてこの山脈を選び、山中で自身の爵位の重みを熟考する場面が描かれています。

また、シエラ・モレナ山脈は、スペイン文化や伝承の分野でも重要な存在です。「シエラ・モレナの山賊」の伝説や、オオカミに育てられた子供マルコス・ロドリゲス・パントーハの物語など、多くの伝承が残されています。

自然

シエラ・モレナ山脈には、コルクガシやセイヨウヒイラギガシなどのデエサ（牧草地）や、ヤナギやトネリコの河畔林が広がっています。イベリアカタシロワシやクロハゲワシなどの貴重な鳥類が生息しており、絶滅の危機に瀕しているスペインオオヤマネコの最後の生息地の一つでもあります。

山脈内には、アラセーナ山地・アローチェ峰自然公園やカルデーニャ&モントーロ自然公園など、多くの自然公園や保護地域が存在し、豊かな自然が保護されています。

シエラ・モレナ山脈は、その名の通り、どこか神秘的で人を寄せ付けない雰囲気を持ちながらも、豊かな自然と歴史、文化が息づく魅力的な山脈です。イベリア半島を訪れる際には、ぜひ足を運んでみてください。

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