シエーナ共和国

シエーナ共和国（Repubblica di Siena）は、中世イタリア半島に存在した国家であり、シエーナの都市国家として発展しました。トスカーナ地方の覇権を巡り、フィレンツェ（フィレンツェ共和国、後のメディチ家による国家）としのぎを削りました。

歴史

シエーナ共和国の誕生

1115年、トスカーナ女伯マティルデ・ディ・カノッサの死後、その領土は細分化され、各地で自治的な勢力が台頭しました。シエーナは金融の中心地として、また羊毛取引の主要な拠点として急速に発展しました。

12世紀初頭、貴族中心の行政機構は市民による自治組織（コムーネ）へと移行しました。都市を治めるコンスルは市民から選出されるようになり、郊外の封建領主を都市に取り込むことで、コムーネの領域は拡大しました。当初、シエーナはシエーナ司教の支配下にありましたが、12世紀中に司教の統治力は衰退しました。司教はアレッツォとの領土問題を巡り、有力市民の協力を得る代わりに、都市運営における彼らの発言権を認めざるを得なくなりました。1167年、シエーナのコムーネは司教からの独立を宣言し、1179年には都市憲章が制定されました。

シエーナとフィレンツェ

シエーナ共和国は、内部に貴族と市民党派の対立を抱えつつ、最大のライバルであるフィレンツェと対立しました。13世紀の教皇派（ゲルフ）と皇帝派（ギベリン）の争いでは、フィレンツェが教皇派に属したのに対し、シエーナは主に皇帝派の立場を取りました。1260年のモンタペルティの戦いでは、シエーナを含むギベリン軍が、数で勝るフィレンツェなどのゲルフ軍を破りました。

1348年、黒死病の流行によりシエーナは大きな打撃を受け、財政難にも苦しみました。1355年、神聖ローマ皇帝カール4世がシエーナを訪れると、人口が増加し、従来の九人による統治体制から十二人へと代表者数が増員されました。その後も代表者の数は変動を続け、最終的に十人、十一人、十五人と不安定な状態が続きました。1399年、シエーナはフィレンツェに対抗するため、ミラノ公ジャン・ガレアッツォ・ヴィスコンティを迎え入れました。1404年にヴィスコンティ家が追放されると、十人による政府が成立し、ナポリ王ラディズラーオ1世に対抗するためフィレンツェとの連携を深めました。1458年、シエーナ出身のピウス2世が教皇に選出されると、ピッコロミニ家などの貴族党派が政権を握りましたが、教皇の死後、再び市民党派が政権を奪還しました。

1487年、パンドルフォ・ペトルッチの支援のもと、フィレンツェやナポリ王アルフォンソ2世の支援を受けた貴族党派が政権を奪回しました。ペトルッチは1512年に亡くなるまでシエーナを統治し、芸術と科学を保護し、チェーザレ・ボルジアから都市を守りました。しかし、ペトルッチの死後、ペトルッチ家は内紛を繰り返し、1523年に市民党派によって追放されました。その後も政情は安定せず、皇帝カール5世がスペイン軍にシエーナを占領させました。

シエーナ共和国の滅亡

1552年、シエーナ共和国はフランスと同盟し、スペイン軍を追放しました。しかし、カール5世は傭兵隊長のジャン・ジャコモ・メディチを派遣し、皇帝軍とフィレンツェ軍によるシエーナ攻略を開始しました。シエーナ共和国はピエトロ・ストロッツィを指揮官に迎えて防戦しましたが、1554年8月のマルチアーノの戦いでシエーナ軍は敗北しました。1555年 4月17日、シエーナはスペインに降伏し、シエーナ共和国は終焉を迎えました。ただし、シエーナの共和派の700家族は、1559年までモンタルチーノを拠点に抵抗を続けました。

1556年、スペイン王フェリペ2世はメディチ家から多額の借金をしており、1559年のカトー・カンブレジ条約により、スペインは借金と引き換えにシエーナをフィレンツェ公国（後のトスカーナ大公国）に割譲しました。以後、19世紀のイタリア統一戦争まで、シエーナはトスカーナ大公国の一部となりました。

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