システム艦

システム艦の概念とその歴史

システム艦（Total Ship Systems Engineering, TSSE）とは、C4Iシステムを中心に構築される統合的な軍艦の手法です。この手法は、様々なサブシステムを高いレベルで統合し、デジタル時代に適応した戦闘能力を持つ艦艇を実現します。

システム艦の定義

アメリカ海軍の有名な戦闘システムエンジニアであるウェイン・E・マイヤーは、システム艦に必要なサブシステムを以下のように定義しています。

• - センサー・システム
• - C4Iシステム
• - 戦術級システム（情報処理装置やデータリンク）
• - 交戦級システム（武器管制や射撃指揮システム）
• - 武器システム
• - 支援システム（電源や空調、真水供給など）

これらが一体となって機能することによって、従来のアナログ時代とは根本的に異なる艦艇が生まれます。特に、デジタル技術の導入により、システム同士の連携が強化され、より迅速かつ効率的な戦闘が可能になると指摘されています。

歴史的背景

システム艦の概念は、ギリシャ語に由来する「舵手」を表す「サイバネティックス」に由来します。伝統的に、船舶は一つのシステムとして設計されていましたが、1940年代以降、航空脅威の登場やセンサー技術の進化によって艦橋での統制は困難になりました。このため、武器システムの制御は戦闘指揮所に委譲されるようになったのです。

また、従来のアナログコンピュータは演算性能が限られており、C4Iシステムの拡張は難しかったため、各サブシステムの統合も十分でありませんでした。そこで、デジタルコンピュータを使用することで、C4Iシステムの拡張が可能となり、より緊密な統合が実現されるようになりました。

米海軍の取組み

アメリカ海軍は1958年から、システム艦に必要な統合戦闘システムの開発を開始しました。初めに取り組まれたのがタイフォン・システムでしたが、技術的な課題に直面し、1962年にはほぼ中止となりました。その後、海軍戦術情報システム（NTDS）が1963年に配備され、既存のアナログシステムのデジタル化も進められました。

一方、1974年にはターター-D・システムがカリフォルニア級原子力ミサイル巡洋艦に搭載され、これが西側諸国にも輸出されました。このターター-Dシステムは、日本の海上自衛隊でも採用され、初めてのシステム艦となりました。

その後、タイフォン・システムの概念を引き継いで1969年にイージス計画が開始されました。このプロジェクトでは、ウェイン・マイヤーがプロジェクト・マネージャーとして指揮し、設計段階からシステムインテグレーターとのコミュニケーションを強化することが、成功の鍵となりました。

技術革新

イージスシステムは当初、集中処理構造を採用していましたが、2005年に配備されたベースライン7からは分散コンピューティング構造に移行しました。この変化により、艦艇自衛システム（SSDS）も同様に分散化され、各種艦艇のシステム艦化が進められています。

まとめ

システム艦は、C4Iシステムの強化とデジタル技術の発展をフル活用して、艦艇の戦闘能力を飛躍的に向上させる手法です。歴史的な背景や技術の変遷を踏まえ、今後も進化が期待されます。

もう一度検索