シソイ・ヴェリキィー (海防戦艦)

シソイ・ヴェリキィー

シソイ・ヴェリキィー（ロシア語: Сисо́й Вели́кий）は、ロシア海軍がバルト海向けに建造した独特な海防戦艦であり、同型艦は存在しません。この艦は、当時のイギリス海軍の前弩級戦艦であるロイヤル・サブリン級のデザインを基にしていますが、装甲艦から前弩級戦艦への移行に際し、いくつかの独創的な工夫が施されています。

設計と艦容

シソイ・ヴェリキィーの船体は、乾舷が高く、平甲板型の構造となっています。船の先端は水面下に衝角を持ち、艦首から上がう直立した形状が特徴です。艦首甲板には、強力な30.5 cm連装主砲塔が設置されており、その後方には指揮官のための司令塔が配置されています。

艦橋の左右にはオチキス社製の3.7 cm回転式5連装ガトリング砲がそれぞれ1基ずつ装備されており、艦橋の後ろにはミリタリーマストが立っています。ミリタリーマストは高位置からの敵艦探知に役立つ見張り台が設けられており、ここにも強力な機関砲が配置されています。これにより、水雷艇などの奇襲攻撃に対して効果的な防御が可能となっています。

この艦の設計には、当時の大型艦に共通する特徴的な要素も見られ、艦の後部にはさらに強力な30.5 cm連装主砲塔が設けられ、各所に配置された砲火力は多岐にわたります。特に、舷側には15.2 cmの単装砲が片舷に3基ずつ設置され、対艦攻撃力を高めています。

兵装

シソイ・ヴェリキィーの主砲には国産の「Pattern 1895 30.5 cm（40口径）砲」が採用されており、最大仰角15度で14,640mの距離までの射撃を可能としました。この砲は、フランス式の全方向防御を備えた連装砲塔であり、ロシア海軍の後の戦艦設計に多大な影響を与えました。旋回角度も十分で、攻撃的かつ防御的な能力を兼ね備えています。

副砲としては「Pattern 1892 15.2 cm（45口径）速射砲」が採用されており、射撃速度が高く、敵艦に対して迅速に攻撃を加えることが可能です。艦には水雷艇迎撃用のオチキス製機関砲や、対地攻撃用の6.5 cm野砲も装備され、さらに対艦攻撃用の魚雷発射管を6基搭載することで、多様な戦術に対応できる構造が整っています。

日露戦争と沈没

シソイ・ヴェリキィーは日露戦争において実戦に参加し、日本海海戦でもその姿を見せました。しかし、戦後すぐの対馬韓崎の東方海域で沈没しました。この艦は、その卓越した設計と兵装から注目を浴びていましたが、戦争の激烈な状況の中で運命を共にしました。艦名は、5世紀のエジプトの聖人、大シソイに由来しています。

余談

日本海海戦中、当時の日本でシソイ・ヴェリキィーは「薄いブリキ」と訳されることがあったという、興味深い逸話も残っています。この艦の設計や戦歴は、海軍史において極めて重要な位置を占めていることを示しています。

参考文献

• - 『世界の艦船 増刊第35集　ロシア／ソビエト戦艦史』海人社、1992年

関連項目

• - ソ連・ロシア海軍艦艇一覧
• - 戦艦一覧

外部リンク

• - 'Sisoy Velikiy' (1891)

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