シティ・ホール (ロンドン)

ロンドン市庁舎：サザークからドックランズへ

ロンドン市庁舎は、ロンドン市長とロンドン議会で構成される大ロンドン庁（GLA）の本部です。2002年のGLA設立から2022年までは、テムズ川南岸のサザークに位置する、ノーマン・フォスター設計の個性的な建物が使用されていました。この建物は、その独特な球根状の形状から、様々な比喩で表現されてきました。ガラスの金玉、玉ねぎ、さらにはダースベイダーのヘルメットなど、人々の想像力を掻き立てるデザインでした。

内部には、ニューヨークのグッゲンハイム美術館を思わせる螺旋状の通路があり、最上階の展望デッキ「ロンドンのリビングルーム」からは、ロンドンの街並みを一望できます。この建物は、エネルギー効率の点では課題を抱えていましたが、太陽光発電システムの導入など、環境への配慮も図られていました。

しかし、2022年、市庁舎はサザークからロンドン東部ニューハム区のロイヤル・ビクトリア・ドックへと移転しました。移転先となったのは、かつて展示センターとして機能していた「ザ・クリスタル」という建物です。2016年にGLAが取得し、大規模なドックランズ再開発事業の一環として改修されました。

この新しい市庁舎は、敷地面積18,000㎡を誇る近代的な建物で、持続可能な都市景観を目指した設計がなされています。市民参加型のイベントなどを開催しやすいように考慮されており、照明や窓などの建物制御デバイスにはKNX規格が導入されるなど、インテリジェントビルの要素も取り入れています。

移転には、5年間に渡る経費削減策の一環として、サディク・カーン市長が主導しました。2020年7月に移転計画が発表され、2022年1月に移転が完了しました。建物は「City Hall」と改名され、現在も大ロンドン庁の本部として機能しています。

初代庁舎：サザーク

初代庁舎は、テムズ川南岸サザークに位置し、6500万ポンドの費用をかけて建設されました。しかし、所有権は大ロンドン庁ではなく、25年間の賃貸借契約により借用されていました。建物は、シティ・オブ・ロンドンには位置せず、具体的な公共サービスも提供していませんでした。このため、グレーター・ロンドンとシティ・オブ・ロンドンとの混同を招くこともありました。

大ロンドン庁の前身であるグレーター・ロンドン・カウンシルとロンドン・カウンティ・カウンシルは、サウスバンク上流部のカウンティ・ホールに本部を置いていました。現在もカウンティ・ホールは残っていますが、GLAは使用していません。

二代目庁舎：ドックランズ

二代目庁舎は、ロンドン・ケーブルカーのロイヤル・ドックス駅、ドックランズ・ライト・レイルウェイのロイヤル・ヴィクトリア駅、カスタム・ハウス駅に徒歩圏内というアクセス抜群の場所に位置しています。ロンドン・シティ空港からも至近距離です。

WilkinsonEyreによる設計、オーヴ・アラップ・アンド・パートナーズ社による建築という、優れた建築チームによって実現したこの建物は、持続可能性を重視した設計となっています。市民が庁舎内で積極的に社会活動に参加できるような環境づくりを目指し、地元食材や家庭菜園の展示会なども開催されています。

このように、ロンドン市庁舎は、その移転の歴史や建物の特徴を通して、ロンドンの都市開発や行政の変遷を象徴する存在と言えるでしょう。

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