シトロエン・XM

シトロエンXM：フランスが生んだ個性派フラッグシップセダン

シトロエンXMは、フランスの自動車メーカー、シトロエンが1989年から2000年にかけて製造販売した、ハッチバックおよびステーションワゴン型の乗用車です。シトロエンCXの後継モデルとして登場し、同社の最上級車種として君臨しました。

洗練されたデザインと革新的な技術

XMのデザインは、イタリアのカロッツェリア・ベルトーネが担当しました。当時としては斬新なスタイリングは、シトロエンの伝統と未来的なデザインセンスを見事に融合させています。内装はPSAアドバンスドデザインが設計し、高級感と快適性を両立。前モデルCXがセダンだったのに対し、XMはハッチバックボディを採用。しかし、リヤシートと荷室の間にガラスの仕切りを設けることで、リヤハッチを開けても室内の気密性を保つ工夫が凝らされていました。1991年には、より実用的なステーションワゴンモデルであるブレークが追加されました。

サスペンションシステムには、シトロエン伝統のハイドロニューマチックシステムを進化させた「ハイドラクティブIIIプラス」を採用。電子制御が加わり、優れた乗り心地と操縦安定性を両立しました。1993年にはさらに進化した「ハイドラクティブII」へと改良が加えられています。また、左ハンドルモデルにはセルフセンタリング機構も搭載。

パワートレインは、2.0L直列4気筒SOHCガソリンエンジン、3.0L V型6気筒SOHCガソリンエンジン（PRVエンジン）、そして2.1Lと2.5Lの直列4気筒SOHCディーゼルエンジンを用意。V6エンジン以外にはターボチャージャー搭載モデルも存在しました。V6ガソリンエンジンは1991年に24バルブバージョン、1998年にはDOHCバージョンが登場。これらのエンジンは、シトロエン伝統の前輪駆動方式で駆動されます。

トランスミッションは4速ATと5速MTの2種類が設定され、ATは速度指令式を採用。速度に応じて自動的にシフトチェンジを行うため、タコメーターには各ギアの変速速度がマーキングされています。ATには「D3」と「D4」の2種類のモードが用意され、D4がオーバードライブ、D3は3速までしか変速しないモードとなっています。このATは、日本の道路状況では若干の違和感や燃費への影響があったものの、巡航時の維持性の高さから、シトロエン愛好家には評価されていました。

個性的な操作系と充実した装備

XMの特徴として、AT/MTを問わず足踏み式のパーキングブレーキが挙げられます。MT車ではクラッチペダルと合わせて4ペダルとなり、特に坂道発進時には煩雑な操作を必要としました。

ボディサイズは、ハッチバックが全長4,710mm×全幅1,795mm×全高1,395mm、ホイールベース2,850mm。ブレークは全長4,965mm×全幅1,795mm×全高1,465mm、ホイールベース2,850mm。

1990年には、ヨーロッパカーオブザイヤーを受賞。シトロエンとしてはGS、CXに続く3度目の快挙でした。1994年にはマイナーチェンジを実施。メーターパネルやダッシュボードのデザインを一新し、それまでのシトロエン伝統であった1本スポークステアリングが廃止されました。ロゴマークも「XM」から「Xm」に変更されています。

ブレークは1998年、ハッチバックは2000年に生産終了。その後継モデルは、5年のブランクを経て2005年に発表されたC6となりました。

日本市場での展開

日本市場では、西武自動車販売とユーノスが正規輸入代理店として販売を担当。1990年から3.0L V型6気筒SOHCガソリンエンジン搭載モデルや、豪華装備のXM-Xが導入されました。1991年からはハンドル位置の左右選択が可能となり、1992年にはXMブレーク、1993年には廉価版のXM-Sが追加されました。1994年以降はマイナーチェンジ後のモデルが輸入され、1996年にユーノスが消滅後は西武自動車販売のみによる輸入が2001年まで続けられました。日本仕様は全て4速ATでしたが、信頼性の低さから5速MTへの換装が行われた車両も存在します。

シトロエンXMは、独特の個性と先進技術を融合した、フランス車らしい魅力に満ちたモデルでした。

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