シドニー・オペラハウス

シドニー・オペラハウスは、オーストラリアのシドニーに位置する、20世紀を代表する近代建築物であり、世界的に有名な歌劇場、コンサートホール、劇場です。その独創的なデザインと歴史的背景から、シドニーだけでなくオーストラリア全体の象徴として広く認知されています。

概要

シドニー港に突き出たベネロング・ポイントの先端に位置し、その面積は1.8ヘクタール、総面積は4.5ヘクタールに及びます。貝殻やヨットの帆を思わせる特徴的な外観は、シドニー・ハーバーブリッジとともに、観光客に人気の撮影スポットとなっています。

ホールの構成

- コンサートホール: 2,679席を擁し、世界最大級の機械式パイプオルガン「グランドオルガン」が設置されています。
- ジョーン・サザーランド劇場: 1,507席。オペラ・オーストラリアの本拠地であり、旧オペラ劇場をリニューアルし、著名なソプラノ歌手の名を冠しています。
- ドラマシアター: 544席
- プレイハウス: 398席
- スタジオシアター: 364席

この他、リハーサルスタジオ、レストラン、バーなども併設されています。建物は全長183m、最大幅120mで、基礎は海面下25mまで打ち込まれたコンクリート杭によって支えられています。外壁には、105万6000枚のスウェーデン製タイルが使用されています。内装は、地元の花崗岩と合板が用いられています。

歴史

構想段階

1940年代後半、ニューサウスウェールズ州立音楽院の校長ユージン・グーセンスは、音響的に優れた大型コンサートホールの建設を提唱し、関係各方面に働きかけました。彼の尽力により、シドニー・オペラハウス建設の機運が高まりました。当時、シドニー・タウン・ホールはコンサート会場としては不十分だったため、新たなホールの必要性が高まっていました。1954年、グーセンスは州首相の支援を得て、コンサートやオペラ公演に適したホールのデザイン公募を開始しました。

グーセンスは、オペラハウスの建設地にベネロング・ポイントを強く主張しました。ここはかつてマッコーリー要塞があった場所で、当時は路面電車の車庫となっていましたが、彼の熱意によりオペラハウス用地に選定されました。

ウツソンの選出と苦闘

建築設計競技には世界中から233件の応募があり、その中からデンマークの建築家ヨーン・ウツソンの設計案が採用されました。ウツソンのデザインは当初落選していましたが、審査員の一人であるエーロ・サーリネンの強い支持により復活しました。1957年、ウツソンはシドニーに到着し、建設を指揮することとなりました。

1959年3月、オペラハウスの着工式が行われました。建設は3段階で計画され、当初は1963年の完成を目指していました。しかし、ウツソンの独創的なデザインは、構造設計上の困難を伴い、工事は大幅に遅れることとなりました。特に、帆のようなコンクリートシェルの構造設計は非常に難解で、初期の放物線案は実現不可能と判断されました。1961年には、工事の遅延が47週にも及んでいました。

シェル構造の転換

コンクリートシェルの施工方法をめぐり、様々な案が検討された結果、ウツソンはシェルをすべて同じ半径の球面から切り出されるリブの集合体として構成する案を提案しました。この案は、構造設計家の賛同を得ただけでなく、工期を大幅に削減することが可能となりました。また、この案が現在のオペラハウスの象徴的なデザインを生み出すことになりました。

ウツソンの辞任

1967年からの内装工事は、ウツソンが自ら設計した合板を用いたデザインを進めていました。しかし、1965年に州政府が変わり、工事費が大幅に膨れ上がったことから、ウツソンは公共事業省との間で対立を深めました。1966年2月、ウツソンは設計者を辞任し、二度とオーストラリアの地を踏むことはありませんでした。

ウツソン離脱後の建設

ウツソンの辞任後、設計は複数の建築家によって引き継がれました。内装デザインは大幅に変更され、大ホールはコンサート専用ホールとなり、小ホールにはオペラも上演可能な機能が追加されました。ウツソンが設計した音響設備や内装デザインはほぼすべて破棄され、次善の策が取られました。こうして、オペラハウスは1973年に完成しました。

当初700万ドルと見積もられていた建設費は、最終的に1億200万ドルに膨れ上がりました。完成は当初の予定から10年遅れ、費用は当初の14倍以上となりました。

開館

1973年 10月20日、エリザベス2世臨席のもと、ベートーヴェンの第九が演奏され、オペラハウスは正式に開館しました。開館に先立ち、オペラ劇場ではプロコフィエフのオペラ『戦争と平和』が、コンサートホールではシドニー交響楽団による演奏会が行われました。

シドニー・オペラハウスは、映画の舞台としてもたびたび登場しており、シドニーの象徴として広く認識されています。また、オリンピックやその他のイベントの舞台にもなっています。

世界遺産

シドニー・オペラハウスは、2007年に世界遺産に登録されました。当初はハーバーブリッジを含む周辺一帯を登録しようとしていましたが、最終的にオペラハウスのみが登録されました。登録基準は、「人類の創造的才能を表現する傑作」であることです。

シドニー・オペラハウスは、そのユニークなデザインと歴史的背景から、オーストラリアの重要な文化遺産として、世界的にその価値が認められています。

脚注

この文章は、シドニー・オペラハウスに関する複数の情報源を参考に作成されました。

外部リンク

 シドニー・オペラハウスオフィシャルウェブサイト
建設中の写真
オーストラリア政府観光局教育旅行公式サイト

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