シャギャ・アラブ

シャギャ・アラブ：アラブ馬を起源とする独特の品種

シャギャ・アラブは、19世紀のオーストリア・ハンガリー帝国で生まれた馬の品種です。バボルナ、メズーヘジェシュ、ラダウツ、ピバー、トポルチャンキーといった複数の牧場において、アラブ馬をベースに改良されました。現在では、チェコ、オーストリア、ルーマニア、旧ユーゴスラビア諸国、ポーランド、ドイツ、ハンガリーを中心に広く飼育されており、世界各国へ輸出されるなど、国際的な人気を誇っています。

シャギャ・アラブの起源：アラブ馬とその他の血統

シャギャ・アラブの血統は、ラダウツ、バボルナ、トポルチャンキーのスタッドブックに全て遡ることができ、その起源は主にアラブ馬にあります。中でも重要な種牡馬は、KehilanやSiglavy系統の血統を受け継ぐ芦毛のアラブ馬（あるいはアラブ系馬）であるシャギャです。1830年シリア生まれのシャギャは、当時のアラブ馬の平均よりも大型で、約154～157cmの体高がありました。バボルナ牧場では、純血アラブの牝馬が少なかったため、シャギャは主に他のアラブ血統の牝馬と交配されました。

バボルナやその他の牧場では、トルコによる東ヨーロッパ長期支配の影響を受け、既にアラブ馬の血統が混ざった牝馬が多く存在していました。そのため、シャギャ・アラブには、アラブ馬以外の血統もわずかに混ざっています。サラブレッドやリピッツァナーも一部用いられたとされています。全ての交配において、綿密な血統記録が残されている点が特徴です。

当初、これらの純血ではないアラブ馬は「Araberrasse」（アラブ系種）と呼ばれていましたが、第二次世界大戦後、馬学者のグラマツキ博士によって「シャギャ」と改名されました。これは、ハンガリーで生産されていた純血アラブと混同されるのを避けるためです。シャギャは、事実上あらゆる系統の祖先であったため、この名が選ばれました。

血統と純血種をめぐる議論

シャギャ・アラブは、「純血」アラブ馬とは認められていません。しかし、クローズド・スタッドブックと世界アラブ馬機構(WAHO)において、特別な地位を有しています。WAHOは1978年、バボルナとトポルチャンキーのシステムで生産されたシャギャ・アラブを「純血シャギャ・アラブ」と呼ぶことを認め、シャギャ生産者協会にWAHO紋章の使用を許可しました。ただし、「純血種」とはシャギャ・アラブ同士の純粋な血統を指し、「純血アラブ」とは異なることを明確にしています。

ハンガリーの牧場における綿密な記録管理により、長期間にわたり完全な血統の馬が生産されてきたという点から、一部の愛好家は「純血」アラブ馬よりも純粋な血統であると主張しています。しかし、シャギャ・アラブは独自の血統グループとして、通常「純血アラブ」とは区別されています。

シャギャ・アラブの特徴と用途

シャギャ・アラブは、高い位置の尾、丈夫な骨格、優れた持久力といった特徴を持ち、純血アラブ馬と類似した外見をしています。しかし、非アラブ種のわずかな流入と、ハンガリーの牧場の育成目的の影響により、純血アラブ馬よりも体高が高く、やや骨太で、優雅さに欠ける傾向があります。現代のシャギャ・アラブの体高は、少なくとも15ハンド（約152cm）、一般的には16ハンド（約163cm）以上あります。

用途としては、乗用馬として広く用いられ、馬車にも使用されてきました。かつては丈夫な騎兵馬としても活躍していましたが、現在では馬場馬術、総合馬術、エンデュランス競技など、様々な馬術競技で人気があります。2006年のFEIエンデュランス世界選手権では、バボルナで生産されたシャギャのせん馬が優勝するなど、その高い能力が証明されています。

まとめ

シャギャ・アラブは、アラブ馬を起源としつつも、独自の進化を遂げた、魅力的な馬の品種です。その歴史、特徴、用途、そして純血種をめぐる議論は、馬の歴史や品種改良を考える上で貴重な知見を与えてくれます。綿密な血統管理と、高い能力を兼ね備えたシャギャ・アラブは、これからも世界中で愛され続けることでしょう。

もう一度検索