シャディ・ベク

シャディ・ベク・ハン

シャディ・ベク・ハン（生年不詳 - 1407年）は、ジョチ・ウルスのハンの一人です。彼は、ジョチの十三男であるトカ・テムルの子孫にあたるノムカン王家出身であり、先代ハンであったテムル・クトルクの従兄弟でした。

生涯

シャディ・ベクは、マングト部の有力者エディゲによって擁立された傀儡ハンの一人として歴史に登場します。当時のジョチ・ウルスは、バトゥ家の断絶後、有力な家臣や周辺勢力が台頭し、ハン位を巡る争いが絶えない状況でした。エディゲは、自身の勢力拡大のために、シャディ・ベクをハンとして利用しようとしました。

しかし、シャディ・ベクはエディゲの傀儡に甘んじることを良しとせず、自らの権力確立を目指し、エディゲを排除しようと画策します。しかし、シャディ・ベクの計画はエディゲに察知され、逆にエディゲによってハン位を追われることとなります。エディゲは、新たにテムル・クトルクの子であるボラトをハンに擁立し、シャディ・ベクは首都サライから追放されました。その後のシャディ・ベクはカフカース方面へ逃れたと伝えられていますが、詳細は不明であり、1407年に亡くなったとされています。

シャディ・ベクの治世は短く、ジョチ・ウルスの混乱期における傀儡ハンの一人として、エディゲの勢力争いの道具として利用された悲劇的な人物として描かれています。

トカ・テムル系ノムカン王家

ジョチ
トカ・テムル
キン・テムル
アバイ
ノムカン
クトルク・テムル
テムル・ベク・ハン
テムル・クトルク・ハン
ボラト・ハン
テムル・ハン
クチュク・ムハンマド
マフムード・ハン ⇒ アストラハン・ハン国
アフマド・ハン ⇒ 大オルダ
クトル・ベク
シャディ・ベク・ハン

参考文献

赤坂恒明『ジュチ裔諸政権史の研究』（風間書房、2005年2月）
赤坂恒明「ペルシア語・チャガタイ語諸史料に見えるモンゴル王統系譜とロシア」『北西ユーラシアの歴史空間』（北海道大学出版会、2016年3月）
川口琢司「キプチャク草原とロシア」『岩波講座世界歴史11』（岩波書店、1997年）
川口琢司「ジョチ・ウルスにおけるコンクラト部族」『ポストモンゴル期におけるアジア諸帝国に関する総合的研究』（2002年）
坂井弘紀「ノガイ・オルダの創始者エディゲの生涯」『和光大学表現学部紀要』（第8号、2007年）

もう一度検索