トカ・テムル

トカ・テムルとは

トカ・テムル（生没年不詳）は、ジョチ・ウルスの王族であり、チンギス・カンの長男ジョチの十三男として生まれた。

生涯

父ジョチの死後、兄のバトゥが一家の当主となると、トカ・テムルは他の年少の兄弟たちと共に、長兄オルダが支配する左翼ウルス（オルダ・ウルス）に留まった。ジョチの息子たちの中で、オゴデイとグユクの即位式、そしてモンケをカアンに選出するクリルタイに出席したのは、トカ・テムルただ一人であった。しかし、バトゥを総司令官とするヨーロッパ遠征には参加せず、本国に留まっている。同時代の史料において、トカ・テムルの目立った活動は確認されていない。

ベルディ・ベク・ハンの在位中（1357年 - 1359年）には、左翼ウルスはカラ・キシ（非チンギス・カン裔）のテンギス・ブカに支配されていた。しかし1360年代になると、トカ・テムル家の王子がテンギス・ブカを殺害し、トカ・テムル家出身者が左翼ウルスのハン位を継承するようになった。左翼ウルスの支配者の一人であるオロスの子孫が樹立した政権は、ジョチ・ウルスの後継国家の中で最も広範囲にわたって長く繁栄した。

子孫

イルハン朝で編纂された『集史』によると、トカ・テムルには以下の息子たちがいたと記されている。

バイムル
バヤン
ウルン・テムル
キン・テムル

トカ・テムル家出身の主な君主

オロス
トクタミシュ
バラク

トカ・テムル家が樹立した政権

カザン・ハン国
カシモフ・ハン国
クリミア・ハン国
カザフ・ハン国
アストラハン・ハン国
ジャーン朝ブハラ・ハン国

参考文献

赤坂恒明「トカ＝テムル裔の系譜情報の復元」『中央ユーラシアにおける民族文化と歴史像』収録（黒田卓、高倉浩樹、塩谷昌史編, 東北大学東北アジア研究センター, 2003年9月）
川口琢司「キプチャク草原とロシア」『中央ユーラシアの統合』収録（岩波講座 世界歴史11, 岩波書店, 1997年11月）
『中央ユーラシアを知る事典』（平凡社, 2005年4月）

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