シャムシール

シャムシール：中東の伝統的な湾曲刀

シャムシール（شمشیر shamshīr）は、中近東地域で広く用いられた、わずかに湾曲した細身の片刃刀です。その優美な形状と、独特の歴史的背景から、世界中の刀剣愛好家や歴史研究者から注目を集めています。シャムシェール、シャムセールとも呼ばれます。

名称の由来と文化的背景

「シャムシール」という言葉自体は、ペルシア語で「刀剣」を意味する一般的な名詞であり、特定の形状を指すものではありません。同様に、アラビア語の「サイフ（سيف sayf/saif）」や、テュルク語の「キリチ（قليج qilič）」、「クルチ（قليچ qïlïč）」も、本来は刀剣一般、特に曲刀を意味します。これらの言葉は、地域や時代によって異なる刀剣の形状を表すために使われました。

エジプトやアラビア地域では「シャムシール」と呼ばれ、西洋では「シミター（scimitar）」として知られています。この刀剣は、西洋のサーベルなどにも影響を与えたと考えられています。また、これらの曲刀は、「新月刀」「半月刀」「偃月刀」などと和訳されることがあります。ただし、偃月刀は本来、中国の長柄武器であり、シャムシールとは異なるものです。また、日本では柳葉刀を偃月刀と呼ぶことがありますが、柳葉刀はシャムシールとは形状が異なり、より頑丈な造りをしています。

歴史

シャムシールの歴史は古く、パルティア語やパフラヴィー語（中期ペルシア語）では「シャムシェール」（šmšyl / šamšēr）と呼ばれていました。サーサーン朝時代には、シャムシールは直剣でした。アッバース朝時代以降の刀剣も、おおむね直剣が主流でした。

しかし、『集史』などの絵画資料や考古学の研究から、セルジューク朝やモンゴル帝国（およびイルハン朝）など、テュルク・モンゴル系の遊牧戦士の影響を受け、この地域の刀剣は現在のシャムシールのような曲刀になったと考えられています。遊牧民の騎馬戦術に適した形状への変化だったのでしょう。

興味深いことに、アメリカ海兵隊の士官軍刀は1826年以降、シャムシール型（マムルークソード）を採用しています。これは、1805年のダーネの戦いで、プレスリー・オバノン率いる海兵隊が立てた戦功に対し、亡命中のオスマン帝国副王ハメット・カラマンリが自らの帯剣を贈ったことに由来します。この出来事は、シャムシールの歴史に新たな一面を加えています。

形状の特徴

シャムシールは、非常に刃の薄い湾曲した片刃の刀身を持ち、その先端の角度は15度から30度程度です。この湾曲した形状が、シャムシールの大きな特徴です。刀身は柔軟性に富み、斬撃だけでなく、引き裂くような攻撃にも適しています。

柄頭は小指側にカーブを描いており、獅子の頭になぞらえられることがあります。この特徴的な形状は、シャムシールのデザインにおいて重要な要素です。

重心は、鍔から15cmから26cm離れた刀身の部分にあることが多く、この重心位置がシャムシールの独特な取り回しを生み出しています。

参考文献

• - 市川定春『武器辞典』新紀元社
• - 市川定春『武器甲冑図鑑　ARMS&ARMOR』新紀元社
• - 長田龍太『続・中世ヨーロッパの武術』新紀元社、2013年9月14日初版発行。
• - マーティン・J・ドアティ 著、日暮雅通 監訳『中世ヨーロッパ 武器・防具・戦術百科』原書房、2010年7月29日第一刷。

関連項目

• - マムルークソード
• - シャムシール・エ・ゾモロドネガル
• - タルワール
• - プルワー
• - シャシュカ
• - サーベル

シャムシールは、単なる武器としてだけでなく、歴史的、文化的な背景を持つ、魅力的な刀剣です。その優美な形状と、多様な歴史的側面は、多くの人々を惹きつけています。

もう一度検索