シャルル・ド・ヴァロワ (オルレアン公)

オルレアン公シャルル1世：百年戦争を生き抜いた詩人貴族

シャルル1世・ド・ヴァロワ（1394年-1465年）、オルレアン公として知られる彼は、百年戦争という激動の時代を生きたフランス王族であり、優れた詩人としても名高い人物です。ヴァロワ家の一員として、複雑な政治的駆け引きと個人的な悲劇を経験し、その生涯はフランスの歴史に多大な影響を与えました。

シャルル1世は、オルレアン公ルイとヴァレンティーナ・ヴィスコンティの子として生まれました。彼の父はフランス王シャルル6世の弟であり、母方の血筋はイタリアの有力家系に繋がっていました。兄弟にはアングレーム伯ジャンなど、フランス貴族社会の中枢を担う者たちが含まれていました。シャルル5世を祖父、後のルイ12世を子に持つという、王室との深い繋がりも彼の生涯を特徴づけています。

1406年、シャルル1世は、フランス王シャルル6世の長女にして従姉でもあるイザベルと結婚しました。しかし、イザベルは1409年に、一女ジャンヌを出産後に亡くなっています。この不幸は、シャルル1世の生涯における多くの困難の序章に過ぎませんでした。

1407年、シャルル1世の父は、ブルゴーニュ公ジャン1世（無怖公）に暗殺されます。この事件は、フランスの政治情勢を大きく揺るがす、アルマニャック派とブルゴーニュ派の対立を激化させました。母は復讐を誓いますが、ブルゴーニュ公の権力とパリ市民の支持を背景に、その訴えは聞き入れられず、母もまもなく亡くなりました。孤児となったシャルル1世は、やむなく無怖公と表面上の和睦を結ぶことになります。

しかし、シャルル1世は父の仇を討つべく、アルマニャック伯ベルナール7世の娘ボンヌと再婚し、アルマニャック派を率いてブルゴーニュ公に対抗しました。この内戦は、フランスを長期にわたって混乱に陥れることとなります。イングランドの介入も受け、シャルル1世は幾度となくブルゴーニュ派と激しく戦いましたが、最終的に和睦を結ぶことを余儀なくされました。和睦の条件としてイングランドとの同盟を解消したことで、今度はイングランドから賠償金を要求され、弟を人質に出すという苦渋の決断を強いられることになります。

1415年、アジャンクールの戦いにおいて、シャルル1世はイングランド軍に捕虜となり、イングランド各地を転々と移送され、長期間にわたる幽閉生活を送ることとなりました。この期間に、彼は有名な「獄屋の歌」を創作しました。これは、彼の深い悲しみと不屈の精神を示す貴重な作品として、後世に伝えられています。

幽閉中も、シャルル1世はオルレアンの領地や家臣との連絡を絶やすことなく、政治状況の把握に努め、的確な指示を出し続けました。特に、1428年から1429年にかけて行われたオルレアン包囲戦では、異母弟ジャンやジャンヌ・ダルクの活躍によってオルレアンは解放されました。シャルル1世は、彼らへの感謝を表し、ジャンヌに豪華な衣装を贈り、ジャンに年金と爵位を与えています。

イングランドとフランスの和睦交渉が進む中、シャルル1世の釈放も議題に上るようになります。しかし、和平交渉は難航し、シャルル1世は長い間釈放されませんでした。最終的に、イングランドの和平派の働きかけによって、1440年に釈放され、フランスへ帰国することとなりました。帰国後、シャルル1世は政治に復帰しますが、フランス王シャルル7世との関係は良好とは言えず、様々な困難に直面することになります。

その後、シャルル1世は政治から身を退き、ブロワ城に隠棲します。1465年、70歳でその生涯を終えました。晩年には、3番目の妻マリーとの間にルイ12世を含む子供をもうけました。

シャルル1世の生涯は、百年戦争という激動の時代における王族の苦悩と、詩人としての才能を併せ持った稀有な存在であったことを物語っています。彼の詩作、そして波乱に満ちた生涯は、中世フランスの歴史を理解する上で、重要な手がかりを与えてくれます。

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