シャルル＝フランソワ・ドービニー

シャルル＝フランソワ・ドービニー（Charles-François Daubigny, 1817年2月15日 - 1878年2月19日）は、19世紀フランスを代表する風景画家の一人です。彼はバルビゾン派に数えられ、その後の印象派の発展に重要な役割を果たしました。

生涯

パリで生まれたドービニーは、父親のエドモン＝フランソワ・ドービニーと叔父のピエール・ドービニーも風景画家であり、幼少の頃から絵画の教育を受けました。1841年にはパリ国立高等美術学校に進学し、ポール・ドラローシュのアトリエで学びました。1843年頃からフォンテーヌブローの森などで作品を制作するようになり、自然の中で直接観察することを重視するようになります。

ドービニーは、フランス各地を旅しながら風景画を描き続けました。特に1857年からは、自身の所有する小舟「ボタン号」をアトリエとして使用し、セーヌ川やオワーズ川を移動しながら制作するという独特なスタイルを確立しました。このアトリエ船での制作方法は、後にクロード・モネにも受け継がれ、印象派の画家たちにも影響を与えました。1860年以降はパリ郊外のオーヴェル＝シュル＝オワーズに居を構え、この地で多くの作品を制作しました。

1868年にはサロン（官展）の審査員を務め、ピサロ、モネ、バジール、ドガ、ルノワール、シスレー、ベルト・モリゾなど、後に印象派を形成する若い画家たちの作品を積極的に評価しました。ドービニーは、バルビゾン派の一員として、印象派への橋渡し役を果たし、その後の美術史に大きな影響を与えました。

ドービニーの功績は、その作風だけでなく、後進の育成にもありました。彼は、保守的な美術界の審査員たちの反対を押し切って、若い才能を積極的に評価し、彼らの活動を支援しました。1859年にはレジオンドヌール勲章（シュバリエ）を、1874年にはレジオンドヌール勲章（オフィシエ）を受勲しています。

エピソード

ドービニーは、1867年9月にアトリエ船「ボタン号」での最後の航行を終えましたが、翌1868年春には、より大型の新しいアトリエ船「ボッタン号」を使用し始めました。このアトリエ船は、彼の移動式のアトリエとして、セーヌ川やオワーズ川での制作活動を支えました。

1868年にはサロンの審査員として、多くの反対意見を押し切ってピサロ、モネ、バジール、ドガ、ルノワール、シスレー、ベルト・モリゾの作品を入選させたことは、彼の進歩的な姿勢を示すエピソードとして知られています。ブーダン、ルドン、カスタニャリといった同時代の画家や批評家たちも、ドービニーの先見性と才能に敬意を表しました。

1870年、第二帝政期最後のサロンでは、コローと共に審査員に選出されましたが、モネの作品を入選させることができず、審査員を辞任しました。同年に普仏戦争が勃発すると、ロンドンに一時的に避難し、同じくロンドンに避難していたモネやピサロに、後に印象派の画商として知られるポール・デュラン＝リュエルを紹介しました。この出会いは、印象派の発展にとって非常に重要な出来事となりました。

1872年にはオーヴェル＝シュル＝オワーズでポール・セザンヌと出会い、その才能を高く評価しました。また、ドービニーの家の庭は、1890年にフィンセント・ファン・ゴッホによって「ドービニーの庭」として描かれています。

ドービニーの作品は、自然の光と色彩を捉えた、生き生きとした表現が特徴です。彼は、バルビゾン派の画家として、戸外での写生を重視し、その手法は印象派の画家たちに大きな影響を与えました。

参照

以下に参考文献を示します。

ハーグ市立美術館・国立国際美術館（大阪）監修「バルビゾン派をめぐる画家たち」カタログ、ハインク・インターナショナルB.V.、1987年
カトリーヌ・ドゥロ監修「シャルル=フランソワ・ドービニー展」カタログ,印象社,2018

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