シルバー・サドル 新・復讐の用心棒

『シルバー・サドル 新・復讐の用心棒』とは

1978年に公開された映画『シルバー・サドル 新・復讐の用心棒』（原題：Sella d'argento）は、イタリア製西部劇、いわゆる「マカロニ・ウェスタン」の時代を締めくくる重要な作品の一つです。ホラー映画の巨匠として知られるルチオ・フルチが監督したマカロニ・ウェスタンとしては最後にあたる作品であり、主演を務めたジュリアーノ・ジェンマにとっても、キャリアの中で多くの当たり役を生んだマカロニ・ウェスタンへの出演は本作が最後となりました。オリジナル脚本はアドリアーノ・ボルゾーニが執筆しています。

物語のあらすじ

本作の主人公は、荒野のガンマン、ロイです。彼の悲劇的な物語は、広大な不毛の地を巡る詐欺事件に端を発します。土地の売主ルーク・バレットに騙され、さらに盗賊によって妻を奪われたブラッドは、息子ロイと共にルークに抗議しますが、ブラッドはルークによって無残にも射殺されてしまいます。父の最期を見届けたロイは、父の銃を手に取りルークを討ち果たし、彼の愛馬を奪って復讐の旅に出ます。以来、ロイはその馬の持つ銀色の鞍にちなみ、「シルバー・サドル」という異名で恐れられる凄腕のガンマンとして、数々の伝説を残しながら荒野を放浪するようになります。

旅の途中、ロイは死体から金品を漁って生活する男、スネークと出会います。一度はスネークに命を救われたことから、二人は行動を共にすることになります。立ち寄った町で、ロイは旧知の娼婦シーバと再会。彼女から山賊ガリンチャと結託する男シップに店を荒らされていると聞き、ロイは単身シップ一味に乗り込み彼らを始末します。シップの死体から金品を探すスネークの前に現れた男ターナーは、スネークに仕事を持ちかけ、スネークはロイを誘います。最初は断ろうとしたロイですが、仕事の依頼内容が因縁の相手であるバレット家のトーマス殺害だと知り、一転して依頼を引き受けます。

バレット家の墓地で待ち伏せたロイの前に現れたのは、幼い少年でした。その少年が別のガンマンに襲われそうになるのを目撃したロイは、少年を助け墓地を後にしますが、彼こそがトーマス・バレット・ジュニアだと知ると、荒野に置き去りにしてしまいます。

その後、廃墟の町で再びトーマス・ジュニアを連れたスネークと遭遇します。スネークはジュニアを誘拐し、彼の姉マーガレットと叔父トーマス・シニアから身代金を得ようと企てますが、そこにトーマス・ジュニアを狙うガリンチャ一味が現れ銃撃戦となります。ロイとスネークは協力してガリンチャ一味を撃退。ジュニアからターナーがバレット家の執事であることを聞き出したロイは、一人バレット家に乗り込みます。

マーガレットから事情を聞こうとしたロイは、自分の名前で身代金要求の手紙が届いていることを知ります。ジュニアの無事をマーガレットに告げたロイは、スネークとジュニアのもとに急ぎますが、身代金要求の手紙がスネークの仕業だと見抜き、彼を追い出します。トーマス・ジュニアを保護するため、ロイはシーバのもとに身を寄せます。

シーバの協力を得て、ロイは売春宿の常連である保安官と娼婦の会話を盗み聞きします。そこで、ターナーがバレット家の財産を狙い、相続人であるジュニアを殺害し、マーガレットと結婚することで財産を横取りしようとしている陰謀を知ります。しかし、その矢先に宿内でターナーとジュニアが出くわしてしまい、ロイはジュニアを修道院に預け、ターナーとの対決を決意します。ターナーはマーガレットを人質に取ってロイを殺害しようとしますが、ロイはターナーとその部下たちを返り討ちにします。駆けつけた保安官とトーマス・シニア、そして解放されたマーガレットと共に修道院へ向かいますが、修道院はすでにガリンチャ一味に襲撃され、ジュニアは連れ去られていました。ジュニアを助けに向かおうとするロイですが、保安官にガリンチャの共犯者だと疑われ、逮捕されてしまいます。

ガリンチャは身代金1万ドルを要求。マーガレットはロイに助けを求めます。一方、トーマス・シニアは独断で身代金の支払いを決め、使用人フレッチャーに金を託しガリンチャのもとへ向かわせます。マーガレットの手助けで脱走に成功したロイは、荒野で再びスネークと遭遇し、彼を連れてフレッチャーの後を追います。フレッチャはガリンチャに身代金を渡すことに成功しますが、直後にガリンチャに殺害されてしまいます。ガリンチャは逃げ出したジュニアを捕らえ拷問しますが、そこにロイとスネークが現れ、壮絶な銃撃戦が繰り広げられます。ロイとスネークはガリンチャ一味を全滅させますが、スネークはガリンチャの凶弾に倒れます。

トーマス・ジュニアをバレット家に送り届け、立ち去ろうとするロイの前に、トーマス・シニアが立ちはだかります。ロイは、事件の真の黒幕がトーマス・シニアであり、彼が財産独占のためにターナーを操り、さらにガリンチャ一味とも手を組んでいたことを暴きます。トーマス・シニアは口封じのためにロイとジュニアを殺そうとしますが、マーガレットが用意した旧式銃を手にしたロイは、彼の脚を撃ち抜き、「お前は銃ではなく縛り首で死ぬ」と告げます。事件が解決した後、ロイはジュニアとマーガレットに別れを告げますが、ジュニアは旅への同行を願い出ます。ロイはジュニアを受け入れ、二人は共に荒野の彼方へと歩き出します。

製作と公開

本作は、ルチオ・フルチが『真昼の用心棒』『荒野の処刑』に続いて監督したマカロニ・ウェスタンの３作目にあたります。リッツォリ・フィルム・プロダクションの資金援助のもと製作されました。本作は、彼のキャリアにおける重要な転換点となるホラー映画『サンゲリア』が製作される直前に手掛けられた作品であり、『サンゲリア』でタッグを組むことになる作曲家のファビオ・フリッツィや編集のセルジオ・サルヴァティらが本作にも参加しています。撮影は1977年から1978年初頭にかけて、マカロニ・ウェスタンの主要なロケ地であったスペイン・アルメリアで行われました。この地で撮影されたマカロニ・ウェスタンとしては、本作が『China 9, Liberty 37』と共に最後期の作品群に含まれます。

主演のロイ役には、『夕陽の用心棒』以降マカロニ・ウェスタンのスターとして君臨していたジュリアーノ・ジェンマが起用されました。共演陣には、マカロニ・ウェスタンへの出演経験が豊富で性格俳優として評価の高かったドナルド・オブライエン、エットレ・マンニ、アルド・サンブレル、ジェフリー・ルイスらが名を連ねています。トーマス・ジュニア役には、『The Balloon Vendor』『Nenè』などで知られる子役スヴェン・ヴェルサッチが抜擢されました。ヒロインのマーガレット役には、ロマンティック・コメディで活躍していたシンツィア・モンレールが起用され、彼女は後に『ビヨンド』などフルチ監督のホラー作品にも出演することになります。また、映画出演経験が浅かったリシニア・レンツィーニも主要キャストに名を連ね、本作出演後にコメディ映画へと活躍の場を移しました。保安官役のフィリップ・ハーセントは、本作の製作から４年後に死去しており、本作が彼の遺作となりました。

1978年4月20日にイタリアで公開され、興行収入2億3,700万リラを記録し、一定の成功を収めました。その後、1980年までにヨーロッパ各国でも順次公開され、特に西ドイツ、オーストリア、ハンガリーで人気を博し、これらの３カ国合計で88万人を超える観客を動員しました。暴力描写のため、多くの国でR15指定を受けましたが、西ドイツやノルウェーではR16、アルジェリアではR13指定となりました。一方、アメリカ合衆国では劇場公開されず、批評家や熱心なファンの間では評価が高いにもかかわらず、アメリカ国内での知名度は低いままとなっています。

参考文献：
Matuszak, David F. The Cowboy's Trail Guide to Westerns. Redlands, California: Pacific Sunset Publishing, 2003.
Palmerini, Luca M. and Gaetano Mistretta. Spaghetti Nightmares: Italian Fantasy-Horror as Seen Through the Eyes of Their Protagonists. Key West, Florida: Fantasma Books, 1996.
* Weisser, Thomas. Spaghetti Westerns: The Good, The Bad, and The Violent: A Comprehensive, Illustrated Filmography of 558 Eurowesterns and Their Personnel, 1961-1977. Jefferson, North Carolina: McFarland, 1992.

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