シンディア家

シンディア家：北インドを駆け抜けたマラーターの雄

シンディア家（Scindia/Scindhia/Sindhia/Sindia）は、18世紀から19世紀にかけて、北インドおよびマールワー地方、ラージャスターン地方を支配したマラーター同盟の有力な諸侯（サルダール）です。1817年以降は、英領インドのグワーリヤル藩王国となりました。

興隆

シンディア家の祖、ラーノージー・ラーオ・シンディアは、もともとマラーター王国の武将でした。宰相バージー・ラーオの命を受け、マルハール・ラーオ・ホールカルと共にマールワー地方へ遠征し、チャウタとサルデーシュムキーを徴収しました。1731年以降、ラーノージー・ラーオはウッジャインを拠点とし、勢力を拡大しました。

ラーノージーの死後、長男ジャヤッパージー・ラーオが当主を継承しましたが、ラージャスターン地方への遠征中に暗殺されてしまいます。その後、幼い息子ジャンコージー・ラーオが当主となり、叔父ダッタージー・ラーオが摂政として政務を執りました。

アフガン勢力との衝突

この頃、アフガン勢力ドゥッラーニー朝が侵入を繰り返し、マラーター勢力との間で衝突が激化しました。1757年、アフマド・シャー・ドゥッラーニーがデリーを占領し、虐殺・略奪を行います。マラーター王国は宰相の弟ラグナート・ラーオを派遣し、アフガン勢力を一時的に撃退しますが、その後、ダッタージー・ラーオが戦死、ジャンコージー・ラーオも捕えられ処刑されてしまうなど、シンディア家は苦境に立たされます。

1761年の第三次パーニーパトの戦いでは、マラーター同盟軍はアフガン軍に大敗。シンディア家も多くの犠牲者を出し、当主の座が３年間空位となるなど、大きな痛手を負いました。

マハーダージーの活躍

その後、マハーダージー・シンディアが当主となると、彼は第三次パーニーパトの戦いで負傷した経験から、軍の近代化を推し進めます。彼はマラーター同盟の立て直しを図り、1771年にはデリーを占領し、北インドの支配者としての地位を確立しました。

さらに、皇帝シャー・アーラム2世をデリーへ帰還させ、ムガル帝国の摂政と軍総司令官に任命されるなど、シンディア家の権威は北インド全域に轟きました。彼は巧みな外交手腕でイギリスとの対立を回避しつつ、勢力を拡大しました。

ダウラト・ラーオの治世と第二次マラーター戦争

マハーダージーの死後、養子ダウラト・ラーオ・シンディアが当主となります。ダウラト・ラーオは、ホールカル家との抗争を繰り広げますが、プネーの戦いで敗北。さらに、イギリスとの第二次マラーター戦争で大敗し、広大な領土を失ってしまいます。

第三次マラーター戦争と藩王国化

第二次マラーター戦争後、シンディア家は領土の一部を回復しますが、群盗ピンダーリーの活動が活発化し、新たな火種が発生します。1817年、第三次マラーター戦争が勃発すると、シンディア家はイギリスと軍事保護条約を締結し、ラージャスターン地方での権益を放棄。これにより、シンディア家はイギリスに従属する藩王国となります。

イギリス従属下の藩王国として

藩王国となった後も、シンディア家は存続しますが、1857年のインド大反乱では、藩王はイギリスに味方したものの、軍が反乱軍に加わるなど、混乱を経験しました。

1947年、インド・パキスタン分離独立時に、シンディア家のグワーリヤル藩王国はインドへと併合され、その歴史に幕を閉じました。

まとめ

シンディア家は、マラーター同盟の有力な一員として、その興隆から衰退まで、インドの歴史に大きな足跡を残しました。その興隆、そしてイギリスとの抗争、藩王国としての終焉は、インドの激動の時代を象徴する物語として、今に語り継がれています。

参考資料

小谷汪之『世界歴史大系 南アジア史2―中世・近世―』山川出版社、2007年。
ビパン・チャンドラ 著、栗原利江 訳『近代インドの歴史』山川出版社、2001年。
ブライアン・ガードナー 著、浜本正夫 訳『イギリス東インド会社』リブロポート、1989年。

関連項目

マラーター王国
* マラーター同盟

もう一度検索