シースクア (ミサイル)

シースクア

概要と開発経緯

シースクア（Sea Skua）は、英国のブリティッシュ・エアクラフト・コーポレーション（BAC、現在のMBDA）によって生み出された空対艦ミサイルです。ヘリコプターへの搭載に最適化された軽量かつ比較安価な対艦兵器として、1970年代初頭に開発が始まりました。特にアグスタウェストランド リンクスのような哨戒ヘリコプターに搭載され、小型ながらも強力な対水上打撃力をもたらすことを目指しました。航空機からの誘導発射試験は1979年11月に開始され、1981年には完了しています。後に、箱型キャニスターに収められた艦対艦ミサイル型「シースクアSL」が1988年に発表されたほか、これをトラックに搭載した地対艦ミサイル型も派生しています。

設計思想と特徴

本ミサイルは、哨戒ヘリコプターから敵の高速戦闘艇などを攻撃することを主眼に置いて設計されました。当時の有力な小型艦艇向け個艦防空システムであった、ソ連（現ロシア）製の4K33 オサーM（SA-N-4）ミサイル・システムの有効射程圏外から攻撃を仕掛けられるよう、十分な射程が確保されています。

シースクアの大きな特徴は、誘導方式にセミアクティブ・レーダー・ホーミング（SARH）を採用している点です。これは、目標へのレーダー波照射を搭載母機が行い、ミサイルはその反射波を捉えて誘導される方式です。通常、本ミサイルはフェランティ社製のXバンド帯シースプレー・レーダーと組み合わされ、一つの武器システムとして機能します。運用においては、まずレーダーで目標を捜索・探知し、次に目標追尾・照射モードに切り替えて捕捉します。その後、発射するミサイルを選択し、目標までの巡航飛行高度を設定して発射されます。

推進には固体燃料ロケットモーターが用いられ、2秒間の燃焼で初期加速を得るブースターと、その後の巡航段階を担うサステナーが搭載されています。シースクアのユニークな設計として、このブースターとサステナーが同時に点火される点が挙げられます。サステナーの噴射は、斜めに開いた2つのベンチュリーノズルから行われます。ミサイルの飛翔安定と制御は、尾部に配置された4枚の固定フィンと、機体前部の電動式操舵翼面によって行われますが、固定フィンと操舵翼面は意図的に45度ずらして配置されています。また、本ミサイルは超低空で水面上を飛翔する、いわゆるシースキマー型の対艦ミサイルです。飛行高度の制御には電波高度計が用いられ、発射後は一旦中間高度で安定した後に、低高度でのシー・スキミング飛行に移ります。飛翔高度は5メートルから100メートルの間で設定可能です。

実戦における活躍

シースクアは、配備されて間もない1982年のフォークランド紛争で、早速その実力が試されました。5月2日、イギリス海軍の42型駆逐艦「コヴェントリー」および「グラスゴー」に搭載されたリンクスヘリコプターが、捜索救難活動中であったアルゼンチン海軍の哨戒艇「アルフェレツ・ソブラル」に対し攻撃を敢行しました。計4発のシースクアが発射され、うち3発が命中し、「アルフェレツ・ソブラル」は大破しています。また、この紛争では、沈没した輸送船（「リオ・カルカラーニャ」「リオ・イグアス」）の残骸を破壊するためにも追加で4発が使用されました。

さらに、1991年の湾岸戦争でも重要な役割を果たしました。1月29日、カフジの戦闘に関連し、クウェート沖のファイラカ島付近でイラク軍の上陸用舟艇17隻および護衛の高速戦闘艇、掃海艇からなる船団を、シースクア搭載のリンクスヘリコプターが要撃しました。この攻撃で2隻の舟艇が撃沈され、その他にも複数の目標に損害を与えています。翌日には、ポルノクヌイ型揚陸艦3隻、リュールセンTNC-45型ミサイル艇3隻（クウェート海軍からの鹵獲艇）、機雷敷設艇1隻で構成された別の船団が同様に攻撃を受け、ミサイル艇は全滅、揚陸艦と敷設艇もそれぞれ1隻ずつが損害を被りました。

発展と後継

1993年までに、シースクアミサイルは合計1,088発が生産されました。1995年度時点での単価は316,600ドルとされています。ミサイルの能力向上も図られており、2006年には誘導装置をアクティブ・レーダー・ホーミング（ARH）に変更したシースクアMk.2が発表されています。さらに、赤外線画像（IIR）誘導方式を導入したシースクアIRも計画段階にあります。これらの発展型は、イギリス海軍が求めた将来対水上誘導兵器（FASGW-H、Future Anti-Surface Guided Weapon-Heavy）の要求仕様に合致するものとされています。

採用国

シースクアは、以下の国々で採用され、様々なプラットフォームに搭載されました。

オーストラリア海軍：S-70B-2哨戒ヘリコプター
バーレーン海軍：地対艦ミサイル型
ブラジル海軍：リンクスMk.21哨戒ヘリコプター
ドイツ海軍：リンクスMk.88およびシーキング哨戒ヘリコプター
大韓民国海軍：スーパーリンクスMk.99哨戒ヘリコプター
クウェート海軍：ウム・アルマラディム級ミサイル艇（艦対艦型）
トルコ海軍：アグスタ-ベル 212ASW哨戒ヘリコプター
イギリス海軍：リンクスHAS.2/3, HMA.8哨戒ヘリコプター

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