高速戦闘艇

高速戦闘艇（FAC）

高速戦闘艇、英語ではFast Attack Craft（FAC）は、小型で迅速に動く戦闘艦艇で、水上の敵艦に対して攻撃を実施することを目的として設計されています。この種の艦艇は、主兵装に応じて細分化され、例えば魚雷艇やミサイル艇といった形で分類されます。

分類

イギリスのジェーン海軍年鑑によると、高速戦闘艇は一般的に速力が30ノット以上、満載排水量が700トン未満の水上戦闘艇として定義されています。これらは、ミサイル艇（FAC-Missile）、魚雷艇（FAC-Torpedo）、砲艇（FAC-Gun）などの主兵装によって分類されることが多いです。さらに最近では、ボグハマーやジェットスキーのような小型艇もFIAC（Fast Inshore Attack Craft）として扱われています。FIACは沿岸区域に特化しており、対戦車ミサイルや軽火器、自爆攻撃を行う能力を持っています。

アメリカ海軍協会（USNI）では、FACという用語は使用せず、個別の名称、例えば「ミサイル搭載哨戒艇」や「魚雷艇」を用いて区別しています。

歴史

水雷艇の登場以前

小型の艦艇を用いて敵の大型艦を攻撃する戦術は古代から行われてきました。帆船時代においては、強襲隊がオールで航走し、敵の停泊艦に突入する形での攻撃が行われました。ただし、これらの作戦は基本的に移乗攻撃が前提であり、小型艇に装備される火器は対艦兵器としてではなく、火力支援の役割が強いものでした。

その後、魚雷の発展によって小型艇でも敵艦に損害を与える能力を持つ水雷艇が登場。しかし、駆逐艦の登場により、従来の水雷艇の役割は薄れていきました。

魚雷艇の発展

第一次世界大戦中、駆逐艦の汎用化を受けて、魚雷攻撃専用の高速艇が新たに登場し、これが「魚雷艇」と呼ばれるようになりました。これらは基本的に内燃機関を搭載したモーターボート型で、特にイタリア海軍のMASは有名です。彼らの活躍の一例として、オーストリア＝ハンガリー帝国の戦艦を撃沈したことが挙げられます。

1930年代に入ると、ドイツのSボート、イギリスのMTB、アメリカのPTボートなど、さまざまな魚雷艇が実戦投入され、大きな成果を上げました。

ミサイル艇とその限界

戦後も各国は高性能の魚雷艇の研究を続け、特にソビエト連邦は艦対艦ミサイルを新たな主兵装として導入しました。具体的には、P-15「テルミート」が代表例です。これにより、小型水雷艇もミサイル艇としての役割を担うようになりました。一方、イスラエルは西ドイツ製の魚雷艇を元に、国産ミサイル艇の開発を進め、1973年の第四次中東戦争で大きな成功を収めたことで、ミサイル艇の重要性が認知されることとなりました。

その一方で、輸送能力の限界から実戦能力には制約があり、大型ミサイル艇への移行が進みました。現在では400～500トン級の大型艇が一般的であり、航空優勢を保つことが生存のカギとなっています。また、他の艦艇との連携も不可欠となっています。

このように高速戦闘艇は、歴史を通じて多様な形で発展してきましたが、現在でも新たな型の開発や改良が続いています。

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