シービークイン

シービークイン：逃げ馬から名母へ、そして伝説の母へ

シービークインは、日本の競馬史にその名を刻む名牝です。競走馬としては重賞競走で3勝を挙げ、繁殖牝馬としてはクラシック三冠馬ミスターシービーを産み出したことで知られています。その生涯は、華麗な競走生活と偉大な母としての役割、そして人々の記憶に深く刻まれた功績で彩られています。

誕生からデビューまで

1973年2月、シービークインは千葉県成田市の千明牧場で誕生しました。母はクラシック二冠馬メイズイの姪にあたるメイドウ、父はフランスの凱旋門賞優勝馬トピオという、恵まれた血統を受け継いでいました。幼少期は群馬県片品村の千明牧場本場で育成され、その優れた体格から将来への期待が寄せられていました。1975年、3歳となったシービークインは東京競馬場の松山吉三郎厩舎に入厩し、競走馬としてのキャリアをスタートさせました。

伝説の新馬戦と重賞初制覇

1976年1月、シービークインは東京競馬場での新馬戦でデビューしました。このレースには後に「TTG」と呼ばれ、競馬史に残るライバル関係を築くことになるトウショウボーイ、グリーングラスが出走していました。シービークインは逃げ馬トウショウボーイの直後を追い、惜しくも5着に敗れました。しかし、このレースは後に「伝説の新馬戦」と呼ばれるようになり、シービークインとトウショウボーイの組み合わせは、後にミスターシービー誕生へとつながる重要な出来事でした。その後、シービークインは未勝利戦で初勝利を挙げ、サンスポ賞4歳牝馬特別ではキャリア3戦1勝という低い評価を覆し、重賞初勝利を飾ります。この勝利は、千明牧場にとって9年ぶりの重賞制覇となりました。

クラシックへの挑戦と不振からの復活

優駿牝馬（オークス）では4番人気に支持されながらも、3着という結果に終わりました。その後、エリザベス女王杯を目指して秋シーズンに臨みましたが、腰の不安を抱え、思うような結果を残せませんでした。9連敗を喫するなど、苦しい時期を過ごしました。しかし、1977年9月、条件戦で1年3カ月ぶりの勝利を挙げ、復活を遂げます。続く毎日王冠では、牡馬の一線級を相手に逃げ切り勝ちを収め、重賞2勝目を挙げました。さらに、1978年の京王杯スプリングハンデキャップで重賞3勝目を挙げた後、休養に入り、同年7月に引退しました。

繁殖牝馬時代とミスターシービー

引退後は北海道浦河町の岡本牧場で繁殖牝馬となりました。繁殖初年度の相手にはテスコボーイが予定されていましたが、種付け権の確保ができず、代わりにトウショウボーイとの交配が行われました。この交配から生まれたのが、後のクラシック三冠馬ミスターシービーです。ミスターシービーは、シービークインの気性や強靭な体質を受け継ぎ、数々の栄光を掴みました。シービークインはミスターシービー以外に産駒を残すことができず、1989年に繁殖生活を引退しました。

功労馬として、そして母との再会

引退後は故郷の千明牧場三里塚分場で功労馬として余生を送り、1999年には種牡馬を引退したミスターシービーも同場に移動しました。母子二代で厩務員を務めた佐藤忠雄氏の言葉「澄んだ目、心臓の強さ、内臓全体の丈夫さと根性の座ったところ、何もかもシービークインそのものだったと思う」は、シービークインの偉大さを物語っています。2000年にミスターシービーが死亡した後も、シービークインは4年後の2004年まで生き続けました。

吉永正人騎手とシービークイン

シービークインの主戦騎手だった吉永正人騎手は、シービークインの活躍を通じて、人生の転機を迎えました。吉永騎手は、シービークインの活躍が、自身と妻である鈴木みち子さんの結婚に大きく影響を与えたと語っています。毎日王冠での優勝は、2人の結婚式の2週間前の出来事でした。

シービークインの生涯は、競走馬としての輝かしい功績と、偉大な母としての役割、そして人々の記憶に残る物語として、日本の競馬史に永遠に刻まれています。その生き様は、後世の競走馬や関係者にとって、常に学びと感動を与え続けるでしょう。

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