シーモア島

シーモア島：南極の古生物学研究拠点

南極半島グレアムランドの先端部に位置するシーモア島は、古生物学研究において世界的に重要な島です。南アメリカ大陸に最も近い南極大陸の一部にあり、スノー・ヒル島やジェイムズ・ロス島、ヴェガ島といった島々に囲まれた、16の島からなる列島のひとつです。アルゼンチンが運営するマランビオ基地の存在から、マランビオ島、あるいはシーモア・マランビオ島と呼ばれることもあります。

マランビオ基地：南極観測の要

シーモア島には、アルゼンチンの南極観測基地であるマランビオ基地が設置されています。年間を通して観測活動が行われ、冬季には約55名、夏季には約180名の研究者や職員が滞在しています。この基地は、南極における重要な研究拠点として機能し、シーモア島の研究を支える役割を担っています。

気候：極寒の環境

シーモア島の気候は極めて寒冷です。マランビオ基地での観測によると、平均気温は夏季で約1℃、冬季で約-21℃と記録されています。しかし、冬季には強風が吹き荒れるため、体感温度は-60℃にも達することがあります。このような厳しい環境下において、研究者たちは貴重な研究成果を挙げています。

古生物学：太古の生命の痕跡

シーモア島を構成する地層は、主に白亜紀後期から始新世にかけて形成されたものです。この地層からは、多様な古生物化石が発見されており、南極の太古の環境や生物相を解明する上で貴重な情報源となっています。

1882年、ノルウェー人のカール・アントン・ラーセンがジェイソン号でシーモア島に上陸し、島の地図作成や化石の発見に成功しました。彼の探検は、後のスウェーデン南極探検隊よりも遥かに多くの成果を上げ、シーモア島の研究の礎を築きました。スウェーデン探検隊はアンタークティック号の氷山衝突による沈没事故に見舞われ、隊員たちはスノー・ヒル島でペンギンやアザラシを食糧として14ヶ月間を生き延びなければなりませんでした。

シーモア島で盛んに行われている研究のひとつに、南極の氷河化が始まった始新世の気候変動に関する研究があります。特に、始新世中期に気温が一時的に上昇したことが示唆されており、その原因や影響について研究が進められています。

発見された化石には、絶滅したペンギンの種である Palaeeudyptes klekowskii や Archaeospheniscus wimani、様々な二枚貝類などが含まれます。1982年には、絶滅した有袋類のPolydolopidae科の化石が発見され、南極大陸にかつて哺乳類が生息していたことを示す初めての証拠となりました。他にも、オポッサム目、ミクロビオテリウム目、有蹄類、そして謎の絶滅目であるGondwanatheriaの化石なども発見されており、南極の生物進化の歴史を解き明かす上で重要な手がかりとなっています。

シーモア島は、極寒の環境と豊富な化石資源という、一見相反する要素を併せ持つユニークな場所です。これからも、この島の研究が南極の自然史解明に大きく貢献していくことでしょう。

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