ジェミニ12号

ジェミニ12号：ジェミニ計画のフィナーレ

ジェミニ12号は、アメリカ航空宇宙局（NASA）による有人宇宙飛行計画「ジェミニ計画」の最後を飾るミッションです。1966年11月11日に打ち上げられ、船長ジム・ラヴェル、パイロット バズ・オルドリンが搭乗しました。ジェミニ計画は、来るべき月面着陸計画「アポロ計画」に向け、軌道上での運用技術確立を目指すものであり、ジェミニ12号はその総仕上げとして重要な役割を担いました。

ミッションの目的

ジェミニ12号の主要な目的は、アポロ計画で不可欠となる技術、すなわち宇宙空間でのランデブー、ドッキング、そして船外活動（EVA）の確実な遂行能力を実証することでした。ジェミニ計画のこれまでの飛行で、ランデブーやドッキングは習熟されつつありましたが、船外活動は依然として困難を伴う作業でした。そのため、ジェミニ12号では、船外活動の効率と信頼性の向上に特に力が入れられました。

飛行経過

ジェミニ12号の打ち上げに先立ち、標的機アジェナ標的機（GATV-5001A）が単独で打ち上げられました。続いて、同日、ジェミニ12号がタイタンII GLVロケットによって打ち上げられます。打ち上げから約4時間14分後、ジェミニ12号はアジェナ標的機とのドッキングに成功し、この技術を確立しました。しかし、アジェナ標的機のエンジンに不具合が生じ、これを用いた軌道変更試験は中止せざるを得ませんでした。

船外活動のブレークスルー

ジェミニ12号ミッションの特筆すべき成果は、船外活動技術の劇的な進歩です。過去の困難な経験を踏まえ、宇宙飛行士は水中での extensive な訓練を行い、また、船外作業用の新しい道具や把持しやすい手すりが開発・導入されました。これらの改善により、船外活動は以前に比べてはるかに容易かつ効率的に行えるようになりました。

パイロットのバズ・オルドリン飛行士は、このミッション中に合計3回の船外活動を実施しました。

1回目: 打ち上げ約19時間29分後から2時間29分。宇宙船外部の微小隕石収集装置を回収しました。
2回目: 約42時間48分後から2時間6分。アジェナ標的機とジェミニ宇宙船を約30メートルのテザーで繋ぐ作業を行いました。
* 3回目: 約66時間6分後から55分間。主に船外からの写真撮影を実施しました。

テザー試験と帰還

2回目のEVAで取り付けられたテザーを用いた姿勢制御試験も実施されました。ドッキング解除後、ジェミニ宇宙船とアジェナ標的機はテザーで連結された状態で、安定した相対姿勢を維持できるかが検証されました。この試験は打ち上げ約47時間23分後から約4時間半にわたり行われました。

ミッション終盤、ジェミニ12号は打ち上げから約94時間後に逆噴射を行い、大気圏への再突入を開始しました。帰還プロセスは全自動制御で行われ、宇宙船は目標地点からわずか4.8キロメートル離れたバハマ沖大西洋に着水しました。乗組員と宇宙船は、待機していた航空母艦ワスプによって無事回収されました。なお、このミッション遂行には、アメリカ国防総省から約9,775名の人員、65機の航空機、12隻の艦艇が支援に投入されました。

成果と遺産

ジェミニ12号は、ジェミニ計画全体で目標とされた技術的課題の多くを克服し、特に船外活動における実用的な技術を確立した点で大きな成功を収めました。水中訓練や新しい装備の開発といった改善策は、その後の宇宙遊泳の標準手法となり、月面での複雑な作業が要求されるアポロ計画にとって不可欠な基盤を提供しました。ジェミニ12号の成功は、アポロ計画の実現に向けた道のりを確実なものとしたと言えるでしょう。

ジェミニ12号宇宙船は、現在イリノイ州シカゴの天文学博物館に保管・展示されています。

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