ジェミニ9-A号

ジェミニ9-A号：困難に満ちたミッションの全貌

ジェミニ9-A号は、アメリカ合衆国の有人宇宙飛行計画であるジェミニ計画において、9番目に打ち上げられた宇宙船です。当初の目的は、軌道上でのドッキングでしたが、様々な困難に見舞われたミッションとなりました。

ドッキング目標の変更と「怒ったワニ」

当初、ジェミニ9号はアジェナ標的機(GATV-5004)とのドッキングを予定していました。しかし、アジェナ標的機は打ち上げに失敗。急遽、代替機としてATDA #02186が用意され、ミッション名もジェミニ9-A号に変更されました。ATDAは、アジェナ標的機のドッキングポート部分のみを残したもので、ロケットエンジンや燃料タンクは省略されていました。

ATDAは無事に軌道投入されたものの、シュラウド（ペイロードフェアリング）が完全に開かないというトラブルが発生しました。ジェミニ9-A号が接近し目視確認した結果、シュラウドが半分開いた状態で停止しており、ドッキングは不可能と判断されました。このシュラウドの様子は「怒ったワニ(angry alligator)」と形容されました。

船外活動によるシュラウドの開放も検討されましたが、爆発ボルトの危険性から断念。ドッキング試験は中止され、ランデブー試験のみが行われることとなりました。

困難を極めた船外活動

飛行3日目には、ユージン・サーナン飛行士による船外活動試験が実施されました。宇宙飛行士機動ユニット(AMU)を装着し、推進/機械部を移動する予定でしたが、無重力空間での活動は予想以上に困難でした。

宇宙服は動きづらく、汗による湯気でバイザーが曇り、視界が確保できませんでした。AMUの場所まで移動するのに1時間を費やすほどの状況で、飛行士の疲労と視界不良のため、AMUを使用した船外活動は中止となりました。サーナン飛行士は再び1時間をかけて船内に戻りました。

大気圏再突入と帰還

周回45週目に逆噴射を行い、大気圏再突入を開始しました。再突入は順調に進み、フロリダ半島沖の大西洋に着水。航空母艦ワスプから700mの地点という、非常に近い場所への着水となりました。

ジェミニ9-A号のミッションには、アメリカ国防総省も全面的に協力し、人員11,301名、航空機92機、艦艇15隻が投入されました。

現在

ジェミニ9-A号は、フロリダ州ケープカナベラルにあるケネディ宇宙センターにて保管展示されています。

搭乗員

船長：トーマス・スタッフォード
パイロット：ユージン・サーナン

予備搭乗員

船長：ジム・ラヴェル
パイロット：エドウィン・オルドリン

ジェミニ9-A号は、ドッキングの失敗や困難な船外活動など、多くの課題が浮き彫りになったミッションでしたが、その経験は後の宇宙開発に大きく貢献しました。

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