ユージン・サーナン

ユージン・サーナン：月面を最後に歩いた男

ユージン・アンドリュー・サーナン（1934年3月14日 - 2017年1月16日）は、アメリカ合衆国の元海軍軍人であり、宇宙飛行士として活躍しました。彼は、ジェミニ9-A号、アポロ10号、そしてアポロ計画最後のミッションとなったアポロ17号の船長として、3度の宇宙飛行を経験しました。特にアポロ17号では月面着陸を果たし、「月面を最後に歩いた人物」として歴史に名を刻んでいます。

生い立ちと軍歴

ユージン・サーナンは、イリノイ州シカゴで生まれ、メイウッドで育ちました。1956年にパーデュー大学で電気工学の理学士号を取得後、海軍予備役将校訓練課程 (ROTC) を経て海軍に入隊し、ジェット戦闘機のパイロットとなりました。その後、Naval Postgraduate School で航空工学の修士号を取得しています。

NASAでの活躍

サーナンは、ジェミニ12号、アポロ7号、アポロ14号の各ミッションで予備クルーを務めた後、1966年にジェミニ9-A号の副操縦士として初の宇宙飛行を経験しました。1969年5月には、アポロ10号の月着陸船パイロットとして月軌道を周回し、1972年12月にはアポロ17号の船長として月面着陸を果たしました。

アポロ17号では、地質学者のハリソン・シュミットと共に3回の船外活動を行い、合計約22時間に及ぶ月面探査を実施しました。最初の船外活動は、アポロ11号でニール・アームストロングとエドウィン・オルドリンが行った船外活動の3倍以上の長さでした。月面探査車を使用し35km以上を走破、月の起源を解明する上で重要な地質標本を収集しました。

その後

1976年に海軍大佐とNASAを退職後は、民間企業で活躍しました。彼は、ジム・ラヴェル、ジョン・ヤングと共に、2度の月旅行を経験した数少ない宇宙飛行士の一人です。また、人類史上わずか12人しかいない月面歩行者の一人でもあります。

サーナンは、アポロ計画の記憶を元に自伝『The Last Man on the Moon』を著しました。この作品は、彼の宇宙飛行士としての経験や、月面を歩いた最後の人間としての心情を綴ったもので、多くの読者に感銘を与えました。2003年にはワシントン賞を受賞しています。

2017年1月16日、テキサス州ヒューストンで82歳で死去しました。

エピソード

サーナンは、月面に娘の名前のイニシャル「TDC (Tracy Dawn Cernan)」を刻みました。また、「不可能という文字を自らの辞書からなくす」という信念を持っていました。

イリノイ州リバーグローブのトリトン大学には、彼の功績を称えて「サーナン地球・宇宙センター (Cernan Earth and Space Center)」というプラネタリウムがあります。月面歩行を行った最初のアームストロングと最後のサーナンが共にパーデュー大学の卒業生であるという事実は、大学の誇りとなっています。

1988年には、日本宇宙少年団と学研が主催したアメリカの宇宙関連施設見学ツアーにサーナンが登場し、参加者との交流を行いました。このツアーには、後に宇宙飛行士となる諏訪理も参加していました。

ユージン・サーナンの遺産は、宇宙探査の歴史における重要な一部として、そして次世代の宇宙飛行士への刺激として、永遠に語り継がれるでしょう。

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