ジェームズ・グレートヘッド

ジェームズ・ヘンリー・グレートヘッド：ロンドン地下鉄建設の先駆者

ジェームズ・ヘンリー・グレートヘッド（James Henry Greathead, 1844年 8月6日 - 1896年10月21日）は、ロンドン地下鉄建設における革新的な業績で知られる土木技術者です。彼の開発したシールド工法は、その後のトンネル建設技術に大きな影響を与えました。

生い立ちと初期のキャリア

グレートヘッドは、1844年に南アフリカのケープ植民地、グラハムズタウンで生まれました。イギリス系の血を引く家庭で育ち、祖父は1820年に南アフリカへ移住しました。彼はグラハムズタウンのセント・アンドリューズ大学やケープタウンのディオセサン大学で教育を受けました。1859年にイングランドへ移住し、1863年までウェストボーン・コレギエイト・スクール（キングズ・カレッジ・ロンドンの一部）で学びました。一時的に南アフリカへ戻りましたが、1864年にロンドンへ移住し、土木技術者のピーター・バーロウの下で見習いとして、トンネルのシールド技術を学びました。1867年頃には、ミッドランド鉄道のベッドフォード - ロンドン間で、バーロウの兄弟ウィリアム・バーロウと共に技術者として働きました。

トンネル技術への貢献

1869年、グレートヘッドは再びピーター・バーロウの下で、ロンドン中心部を流れるテムズ川の河底トンネルであるタワー地下道の設計に取り組みました。バーロウが主任技術者、グレートヘッドが実際の掘削作業を担当しました。タワー地下道の掘削に使用されたシールドは、バーロウが考案し特許を取得した円形シールドの影響を受け、グレートヘッドが設計しました。この「バーロウ＝グレートヘッド式シールド」は、直径7フィート3インチ（約2.21メートル）の鉄製円筒にスクリュージャッキを備えたもので、切羽を掘削しながら前進し、背後に鋳鉄製のセグメントでトンネルを構築していくという画期的なものでした。

グレートヘッドは、圧気工法や水圧ジャッキを用いたシールドの前進など、多くの改良に関する特許を取得しました。これらの技術は、現代のトンネル建設における標準的なものとなっています。彼はまた、ブラックウォールトンネルの建設にもコンサルタントとして関わりました。

鉄道建設への関与

1873年、グレートヘッドはハマースミス延長線およびメトロポリタン・ディストリクト鉄道のリッチモンド延長線の常駐技術者となり、4年間務めました。その後は、リージェンツ・カナル鉄道（1880年）、メトロポリタン・アウター・サークル鉄道（1881年）、ロンドン-イーストボーン線（1883年）、アイルランドにおける軽便鉄道（1884年）など、多くの鉄道プロジェクトに関わりました。

1884年、グレートヘッドはロンドン・シティ・アンド・サウスワーク地下鉄（後のシティ・アンド・サウス・ロンドン鉄道、現在のノーザン線）の技術者として、再びトンネル建設に関わりました。この地下鉄は1890年に開通し、世界初の電気鉄道となりました。1888年にはリヴァプール高架鉄道でダグラス・フォックスと共に共同技術者となり、ウォータールー・アンド・シティ鉄道にもウィリアム・ガルブレイスと共に関わりました。彼の最後の仕事は、ジョン・ファウラーおよびベンジャミン・ベイカーと共に取り組んだセントラル・ロンドン鉄道でした。

発明と特許

グレートヘッドは、トンネル技術以外にも様々な発明を行っています。

グレートヘッド式インゼクタ給水栓： これは、現代のスプリンクラーの前身となるシステムで、建物の中に水を送り込んだり、外部にホースを取り付けて地下の水道管とつなぐ仕組みでした。
グレートヘッド式シールド： 前述の通り、トンネル掘削における革新的な技術でした。地盤の軟らかい場所でのトンネル掘削を可能にし、安全性を高めるために圧気工法を組み合わせるなど、多くの改良が加えられました。
グレートヘッド式注入機： ウィンチェスターおよびリンカーン大聖堂の修理工事に用いられました。

栄誉

グレートヘッドの功績を称え、彼の業績を記念する様々なものが作られています。

イングリッシュ・ヘリテッジは、彼が1885年から1889年まで住んだロンドン南西部のバーンズの住宅にブルー・プラークを設置しました。
1994年1月には、シティ・オブ・ロンドンの王立取引所に隣接するバンク駅・モニュメント駅の外側に像が建てられました。この像はロンドン市長により除幕され、台座は地下の換気立坑を隠す構造になっています。
バンク駅の改修工事中には、ウォータールー&シティー線との間の通路においてバーロウ＝グレートヘッド式シールドの一部が発見され、赤く塗装され真鍮のプレートがはめ込まれて、彼の業績を記念しています。

ジェームズ・ヘンリー・グレートヘッドは、その革新的な技術と不屈の精神で、ロンドンそして世界の都市交通の発展に大きく貢献した人物として、記憶されるべきでしょう。

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