ジェームズ・デプリースト

ジェームズ・デプリースト（1936年11月21日 - 2013年2月8日）は、アメリカ合衆国出身の著名な指揮者です。音楽家としての才能に加え、ポリオの後遺症を乗り越えて活躍した人物としても知られています。

生い立ちと初期のキャリア

1936年、フィラデルフィアで生まれたデプリーストは、著名なコントラルト歌手マリアン・アンダーソンの甥にあたります。幼い頃から音楽に親しみ、フィラデルフィア音楽院で作曲を、ペンシルベニア大学で学士号と修士号を取得しました。

1962年、国務省主催のバンコク・ツアーに参加した際、急性灰白髄炎（ポリオ）を発症。一時は活動が危ぶまれましたが、懸命なリハビリを経て回復し、1964年にはディミトリ・ミトロプーロス国際指揮コンクールで優勝を果たしました。この優勝がきっかけとなり、レナード・バーンスタインに見出され、ニューヨーク・フィルハーモニックの准指揮者（1965-1966シーズン）に抜擢されました。

国際的な活躍

1969年、ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団を指揮し、ヨーロッパデビューを果たしました。1971年には、アンタル・ドラティによってワシントン・ナショナル交響楽団の准指揮者に任命され、着実にキャリアを積み重ねていきました。ポリオの後遺症により歩行が困難であったため、電動車椅子で舞台に登場し、そのまま指揮をするスタイルが特徴的でした。

デプリーストは、北アメリカの主要なオーケストラに客演したほか、アムステルダム、ベルリン、ブダペスト、コペンハーゲン、ヘルシンキ、マンチェスター、ミュンヘン、プラハ、ローマ、ロッテルダム、ソウル、ストックホルム、シュトゥットガルト、シドニー、テルアビブ、東京、ウィーンなど、世界各地で指揮をしました。2005年4月には、バービカンでロンドン交響楽団を指揮し、ロンドンデビューも果たしています。アスペン音楽祭、ボストン交響楽団、フィラデルフィア管弦楽団、ジュリアード管弦楽団へは定期的に客演を続けました。

日本との関わり

日本においては、札幌交響楽団への客演や、2005年から2008年シーズンにかけて東京都交響楽団の常任指揮者を務めたことで知られています。その卓越した音楽性と指導力は、日本の音楽界にも大きな影響を与えました。

音楽監督としての活動と受賞歴

ケベック交響楽団、マルメ交響楽団、モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団、オレゴン交響楽団で音楽監督を歴任しました。ジュリアード音楽院の指揮学科及びオーケストラ学科監督、オレゴン交響楽団の桂冠指揮者も兼任しました。

デプリーストは、その功績が認められ、13の名誉博士号を授与されたほか、アメリカ芸術科学アカデミー、スウェーデン王立音楽アカデミーのフェローにも選出されています。フィンランド獅子勲章コマンダー、ケベック市名誉メダル、モナコ文化賞を受賞。2005年には、アメリカ国民芸術勲章を授与されました。

録音と著作

50を超える録音を残しており、ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団とのショスタコーヴィチ交響曲集や、オレゴン交響楽団との15の録音が特に有名です。また、2冊の詩集を執筆するなど、音楽以外の分野でも才能を発揮しました。

晩年と死

2013年2月8日、心臓発作の合併症により、アリゾナ州スコッツデールの自宅で逝去。76歳でした。

『のだめカンタービレ』

二ノ宮知子作の漫画作品『のだめカンタービレ』には、パリの「ルー・マルレ・オーケストラ」音楽監督の役で実名で登場し、実写版では本人が出演しています。

ジェームズ・デプリーストは、音楽家としての卓越した才能と、逆境に立ち向かう不屈の精神で、多くの人々に感動を与えました。彼の音楽と生き方は、これからも長く語り継がれていくことでしょう。

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