ジェームズ・ハリソン

ジェームズ・ハリソン：不屈の精神で高みへ上り詰めたラインバッカー

ジェームズ・ハリソン（James Harrison）は、1978年5月4日生まれ、オハイオ州アクロン出身のアメリカンフットボール選手。NFLのピッツバーグ・スティーラーズを中心に、シンシナティ・ベンガルズ、ニューイングランド・ペイトリオッツでも活躍した元アウトサイドラインバッカー（OLB）だ。

下積み時代

14人兄弟の末っ子として育ったハリソンは、ケント州立大学を経て2002年のNFLドラフトにエントリーするも、指名を受けることはできなかった。ラインバッカーとしては平均以下の身長であることが、評価を下げた要因と言われている。しかし、ドラフト外でピッツバーグ・スティーラーズに入団を果たす。

入団後も決して順風満帆ではなかった。2002年はシーズン中に3度もチームから解雇され、プラクティス・スクワッドで過ごす日々。レギュラーシーズンでの出場は、スペシャルチームとしてわずか1試合のみだった。

2003年にはボルチモア・レイブンズと契約し、NFLヨーロッパのライン・ファイヤーに派遣されるも、再び解雇という憂き目に遭う。一時は獣医を目指そうと考えた時期もあったという。

転機が訪れたのは2004年。クラーク・ハガンズの負傷により、スティーラーズのトレーニングキャンプに招待されたのだ。このチャンスをものにし、ロースター入りを果たす。

キャリアの飛躍

2007年、スティーラーズがジョーイ・ポーターを解雇したことがきっかけとなり、ハリソンの才能が開花する。ボルチモア・レイブンズとのマンデーナイトフットボールでは、3.5サック、3ファンブルフォースという圧倒的なパフォーマンスを披露。一躍、リーグを代表するラインバッカーへと成長を遂げる。

2008年には、リーグ4位、チーム記録となる16サックを記録。ラマー・ウッドリーとのコンビで合計27.5サックを叩き出し、NFL最優秀守備選手賞を受賞した。

同年、チームは第43回スーパーボウルに進出。ハリソンは、第2クォーター終了間際、自陣1ヤードまで攻め込まれた場面で、カート・ワーナーのパスを自陣エンドゾーンでインターセプト。そのままスーパーボウル記録となる100ヤードのリターンタッチダウンを記録した。このプレーは、ハリソンが本来のパスラッシュの役割を瞬時に変更し、パスカバーに下がったことで生まれた奇跡的なプレーだった。

スティーラーズとの契約、そして罰金

2009年4月には、チームと6年5,175万ドルという大型契約を結んだ。同年10月には、デトロイト・ライオンズ戦で3サックを挙げるなど、4試合で7サック、25タックル、2ファンブルフォースを記録し、月間MVPに選出された。

しかし、その激しいプレイスタイルは、度重なる罰金処分という形でハリソンを苦しめることとなる。2010年には、危険なタックルを理由に計4回、総額12万5000ドルもの罰金を科せられた。

晩年

2013年、サラリーキャップの調整のため、スティーラーズから解雇。その後、シンシナティ・ベンガルズと契約するも、かつての輝きを取り戻すことはできなかった。晩年はニューイングランド・ペイトリオッツでもプレーし、2017シーズンを最後に現役を引退した。

プレイスタイル

ハリソンは、スティーラーズの強力ディフェンス「スティールカーテン」の一員として、その名を轟かせた。屈強な体格と、相手を圧倒する激しいプレーが持ち味で、対戦相手にとっては脅威そのものだった。その一方で、危険なタックルが多いことも指摘され、物議を醸すこともあった。

受賞歴

• - プロボウル選出：5回
• - NFL最優秀守備選手賞：1回（2008年）
• - スーパーボウル制覇：2回（第40回、第43回）

ジェームズ・ハリソンは、決してエリート街道を歩んだ選手ではなかった。しかし、不屈の精神と努力で数々の困難を乗り越え、NFL史にその名を刻んだ。彼の激しく、そして記憶に残るプレーは、多くのファンを魅了し続けている。

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