ジェームズ・レッグ

ジェームズ・レッグ：東西文化交流を繋いだスコットランドの学者

ジェームズ・レッグ（1815年12月20日 - 1897年11月29日）は、スコットランド出身の宣教師であり、中国学において比類なき功績を残した学者です。彼の生涯と業績は、東西文化交流の歴史において重要な役割を果たしました。

レッグは1815年、スコットランドのアバディーンシャーで生まれました。1839年、ロンドン伝道協会の宣教師としてマラッカに派遣され、英華書院の校長に就任します。アヘン戦争後、英華書院は香港に移転し、レッグも同行しました。香港では、1844年に佑寧堂を設立するなど、宣教活動にも尽力しました。

しかし、レッグの真の功績は、中国古典の英訳にあります。彼は王韜や黄勝といった中国の学者たちの協力を得ながら、膨大な量の中国古典の翻訳に取り組みました。特に『四書五経』の英訳は彼の代表作であり、中国思想の西洋への理解を深める上で極めて重要な役割を果たしました。

1867年、レッグは王韜と共にスコットランドに帰国し、翻訳作業を継続しました。1870年には『四書五経』の翻訳が完了し、その功績によりアバディーン大学から文学博士号を授与されました。その後、香港に戻り、中国各地を旅した後、1873年にイギリスに帰国します。

1875年、レッグはオックスフォード大学の中国学の初代教授に就任し、その職を生涯全うしました。この任命は、彼の中国学における高い評価を示すものでした。同年、フランスの中国学における最高賞であるスタニスラス・ジュリアン賞の初代受賞者にも選ばれ、その功績が国際的に認められました。

レッグの主な著作として、1861年から1872年にかけてロンドンで出版された『The Chinese Classics』があります。この叢書には『論語』『大学』『中庸』『孟子』『書経』『詩経』『春秋左氏伝』など、主要な儒教経典が含まれています。『易経』と『礼記』は後に別の叢書で出版されました。

さらに、レッグは『The Sacred Books of China』（1882-1891）という叢書も編纂しました。この叢書には、6巻にわたるレッグ自身の翻訳が収録されており、『書経』『詩経』『孝経』『易経』『礼記』『老子道徳経』『荘子』といった儒教・道教の重要な経典に加え、『太上感応篇』『清静経』などの道教経典、仏教関連の文献なども含まれています。また、法顕の『仏国記』や『大秦景教流行中国碑』の翻訳も手掛けています。

レッグの翻訳は、正確性と詳細な注釈が特徴で、西洋における中国学研究の基礎を築きました。彼の業績は、単なる翻訳を超えて、中国思想の理解と西洋への普及に大きく貢献し、東西文化交流の歴史に不滅の足跡を残しました。彼の生涯と業績は、今日もなお多くの研究者や学者たちに学びと影響を与え続けています。 ニューヨーク大学からは名誉神学博士号も授与されています。彼の功績は、単に学術的な領域にとどまらず、文化交流と相互理解の促進という観点からも非常に高く評価されています。

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