ジグムント・ストヨフスキ

生涯と功績

ジグムント・デニス・アントニ・ヨルダン・デ・ストヨフスキ（Zygmunt Denis Antoni Jordan de Stojowski, 1870年 5月4日 - 1946年 11月5日）は、ポーランドを代表するピアニスト、作曲家、そして音楽教育者でした。ポーランドに生まれ、ヨーロッパ各地で音楽の研鑽を積んだ後、20世紀初頭にアメリカ合衆国へ渡り、ニューヨークを主要な活動拠点として、その生涯の後半を過ごしました。彼はこの地を「第二の故郷」と呼び、多岐にわたる音楽活動を展開しました。

ストヨフスキは、ポーランド南部のキェルツェ近郊で生を受けました。幼少期に母親のマリエから音楽の手ほどきを受けた後、ポーランドの作曲家であるヴワディスワフ・ジェレニスキに師事し、音楽家としての基礎を固めました。17歳という若さで、まだ学生の身でありながら、クラクフのオーケストラと共演し、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番を演奏してピアニストとして公式な演奏会デビューを果たします。

18歳になると、さらなる研鑽のためにパリへと留学しました。ここでは、著名なピアニストであるルイ・ディエメにピアノ演奏を、またレオ・ドリーブとテオドール・デュボワに作曲を師事しました。パリ音楽院では、わずか2年後にはピアノ演奏部門で首席に輝き、さらに厳格な対位法とフーガのクラスでも首席を獲得するなど、その才能を遺憾なく発揮しました。しかしながら、後に自身へのインタビューで語ったところによると、彼にとって最も深い影響を与えた師は、ヴァイオリニストのヴワディスワフ・グルスキ、そして1891年から師事した同じくポーランド出身の偉大なピアニスト、イグナツィ・ヤン・パデレフスキであったといいます。音楽院での学びと並行して、ストヨフスキはソルボンヌ大学にも通い、哲学、歴史、文学といった幅広い分野の教養を身につけました。

1891年には、パリのサル・エラールで開催された演奏会で、バンジャマン・ゴダールの指揮により自身のピアノ協奏曲第1番を初演し、これを機に作曲家および演奏家として国際的な活動の第一歩を踏み出しました。その後、彼はドイツやイングランドといったヨーロッパの主要国を巡り、各地の主要オーケストラと共演する機会を得ました。これらの演奏会では、自身の作品も頻繁に取り上げられ、大きな成功を収めました。特に作曲家としては、1898年 7月9日にライプツィヒで開催されたパデレフスキ国際コンクールにおいて、交響曲ニ短調作品21が見事に優勝を飾り、その才能を広く認められることとなりました。また、マウリツィ・ザモイスキ・コンクールではポーランド幻想曲で準優勝を獲得しています。この時期のストヨフスキの作品には、ブラームスやチャイコフスキーといった当時の大家からの影響が顕著に見られました。

ポーランドにおける活動も特筆すべきです。1901年 11月5日には、ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団の記念すべき第1回演奏会において、エミル・ムイナルスキの指揮のもと、ライプツィヒのコンクールで優勝した交響曲作品21が演奏され、この演奏会最大の注目作品の一つとなりました。同年12月には、ストヨフスキ自身がワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団の演奏会にソリストとして出演し、さらに翌1902年1月にも再出演しています。これらの演奏会では、彼の十八番であったサン＝サーンスのピアノ協奏曲第4番が披露されました。

1905年10月、ストヨフスキはアメリカ合衆国へと渡りました。これは、著名な音楽家であるハロルド・バウアーとパブロ・カザルスからの強い推挙があったためと言われています。渡米後、彼はフランク・ダムロッシュによって設立されたばかりの音楽芸術研究所（後のジュリアード音楽学校の前身）の教員に就任しました。教職の傍ら、彼はピアニストとしても瞬く間にその名を知らしめました。早くも1906年には、カーネギー・ホールにおいてフランク・ダムロッシュ指揮のニューヨーク交響楽団と共演し、再びサン＝サーンスのピアノ協奏曲第4番を演奏しています。

幅広い演奏活動に加え、ストヨフスキは精力的に音楽教育活動にも取り組みました。1911年まで音楽芸術研究所で教鞭を執った後、1917年までフォン・エンデ音楽学校の校長を務めました。入門を希望する学生があまりに多かったため、彼は最終的にマンハッタンにある自身の4階建ての自宅を開放し、「ストヨフスキ音楽塾（Stojowski Studios）」を設立しました。また、アメリカ、カナダ、南米といった各地で夏季講習会やマスタークラスを主宰するなど、その教育活動は広範囲に及びました。特に晩年の1940年から1946年にかけては、ジュリアード音楽学校でも夏季講習会を受け持っています。

ストヨフスキのもとからは、数多くの優れた音楽家が育ちました。彼の最も重要な門人としては、アレクサンデル・ブラホツキ、アントニア・ブリコ、フィリダ・アシュリー、オスカー・レヴァント、ミッシャ・レヴィツキ、アーサー・レッサー、アルフレッド・ニューマン、ギオマール・ノヴァエス、ハリエット・ウェア、そしてルイサ・マティルデ・モラレス＝マセドらが挙げられます。ルイサ・マティルデ・モラレス＝マセドはピアニスト・作曲家であり、後にストヨフスキの妻となった人物です。彼女もまた1930年代末まで教育者として活躍しました。ストヨフスキは、ルイサとの間に生まれた3人の息子たち（1919年生まれの長男アルフレッド、1921年生まれの次男ヘンリー、1923年生まれの三男イグナス）を「自分の3つの傑作」と呼び、深く愛情を注いでいたといいます。

ニューヨークにおいて、ストヨフスキは偉大な音楽家として、また優れた教育者（「名伯楽」）として広く称賛されました。特に、ニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団の演奏会で自身の作品が取り上げられた最初のポーランド人作曲家という栄誉は、彼の功績の大きさを物語っています。

主要作品

- 交響曲
- ヴァイオリン協奏曲
- ピアノ協奏曲第1番嬰ヘ短調作品3（1890年）
- ピアノ協奏曲第2番変イ長調『プロローグ、スケルツォと変奏曲』作品32（1910年）
- ピアノと管弦楽のための交響的狂詩曲 Rhapsodie symphonique
- チェロと管弦楽のためのコンツェルトシュテュック
- 室内楽曲（多数）
- ピアノ曲（多数）
- カンタータ（2曲）
- 声楽曲（多数）

ストヨフスキの楽譜の一部は、国際楽譜ライブラリープロジェクト (IMSLP) で参照可能です。

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