ジプシー・ローズ

ジプシー・ローズ

ジプシー・ローズ（1934年または1935年12月18日 - 1967年4月20日）は、福岡県大牟田市出身のストリッパーであり、本名を志水敏子（トシコ）と言います。身長162cm、体重58kg。

生涯

幼少の頃から日本舞踊とバレエを習い、女優を目指していました。1949年、長谷川一夫が主宰する「ロマンス座」と共に上京し、進駐軍のキャンプで踊り子として活動を始めました。15歳で浅草常盤座にて「ローズ・マリー」という芸名でデビューを果たします。

彼女の才能を見抜いた演出家、正邦乙彦の指導の下、作家の田中小実昌が「混血かと思った」と語るほどの日本人離れしたエキゾチックな容姿と、厳しい訓練で習得した腰を激しく回転させるグラインドというダンスで人気を博し、昭和20年代後半には「ストリップの女王」と呼ばれるようになりました。版画家の棟方志功は彼女を「肉体の神」と称賛し、作品「アメノウズメノミコト」は彼女をモデルにしたと伝えられています。

17歳で東劇バーレスクルームに出演した際、その卓越した肉体美とパフォーマンスは、永井荷風、村松梢風、林房雄、舟橋聖一といった著名な作家たちをも魅了しました。連日満員御礼となるほどの人気ぶりでしたが、1954年1月、親会社である松竹の方針により、突然公演が打ち切られることとなります。しかし、人気絶頂であった彼女は、日本各地の劇場から出演のオファーを受け、巡業を開始します。巡業後、東京日劇ミュージックホールと2年間の契約を結びますが、この契約には演出家の正邦乙彦は含まれておらず、彼女は信頼を寄せる正邦と離れて舞台に立つことになりました。

東京日劇ミュージックホールでも圧倒的な人気を博した彼女でしたが、他のダンサーたちからの嫉妬やいじめを受けるようになります。さらに、彼女のグラインドダンスがあまりにも扇情的であるとして、当局から禁止されてしまいます。得意とするダンスを封じられたことによる焦燥感、正邦がいない寂しさ、他のダンサーからの嫌がらせによるストレスから、彼女はこの頃から酒に溺れるようになりました。正邦が巡業から戻ったときには、アルコールが彼女の心身を蝕んでおり、正邦が禁酒させようと試みても効果はありませんでした。

アルコール摂取量が増えるにつれて、彼女の肉体は衰え、ダンスの質も低下し、人気も落ちていきました。やがて、地方の小さな劇場へと追いやられ、ついには劇場のオーナーから「あれはジプシー・ローズではない」とまで言われるほどに衰退してしまいます。1965年、正邦は彼女をストリッパーとして引退させることを決意しました。

正邦は妻子を捨ててまで彼女と共に生きることを選び、山口県防府市でスナックを開店しましたが、その2年後の1967年4月20日、アルコール中毒による心臓麻痺で32歳という若さでこの世を去りました。

彼女の訃報を受け、ファンであった田中小実昌は「ジプシー・ローズが死んだ」という一文を寄せました。

出典

参考文献
祖田浩一 編『異能異才人物事典』東京堂出版、1992年6月、pp129-135頁。ISBN 4-490-10313-1。
西日本新聞文化部 編「肉体の神と呼ばれて」『昭和の尋ね人―アウトサイダー列伝』不知火書房、1999年1月、pp86-91頁。ISBN 4-883-45084-8。
広岡啓一「伝説のジプシー・ローズ」『戦後性風俗大系―わが女神たち』朝日出版社、2000年3月、pp93-100頁。ISBN 4-255-00017-4。
関連作品
映画『実録ジプシー・ローズ』（1974年日活製作、監督：西村昭五郎、演：ひろみ麻耶）
ジプシー・ローズ『裸の自叙伝―ストリップ半生記』久保書店、1966年、ASIN B000JA9GUG
近藤啓太郎『裸の女神―ジプシー・ローズの生涯』文藝春秋、1968年、ASIN B000JA438G
小柳詳助『G線上(ジー・ストリング)のマリア―ジプシー・ローズ・ブルーノート』現代史出版会、1982年、ISBN 4-198-12583-X
関連項目
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